医療・福祉の賃上げ8,540円、15産業で最も少ない 率は3.3%

医療・福祉の賃上げは8,540円
目次

30秒でわかるまとめ

  • 医療・福祉の賃上げ額は、1人平均8,540円でした厚生労働省が10月21日に公表した2026年の調査です。前年の5,589円から増えましたが、15産業で最も少ない額です。
  • 改定率は3.3%で、全産業の4.4%を下回りました前年の医療・福祉は2.3%でした。全産業の改定額は13,926円で、医療・福祉の8,540円より多くなっています。
  • 賃金を引き上げた医療・福祉の企業は95.8%です前年の84.9%から増え、全産業の92.0%を上回りました。引き上げる企業の割合は高くなっています。
  • ベースアップをした企業は48.7%にとどまりました定期昇給制度がある医療・福祉の企業の中での割合です。全産業では57.9%でした。

厚生労働省は10月21日、2026年の「賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果を公表した。民間企業が今年どれだけ賃金を上げたかを、産業ごとにまとめた調査である。医療・福祉の1人平均賃金の改定額は8,540円で、前年の5,589円から増えたものの、15の産業の中で最も少なかった。介護・看護・保育・栄養士の職場を含む医療・福祉の賃上げを、数字で整理する。

改定額8,540円は15産業で最少

「1人平均賃金の改定額」は、賃金を改定したあとと改定する前の、1人あたりの所定内賃金の差である。所定内賃金には諸手当が入るが、時間外・休日手当や深夜手当などの割増手当は入らない。2026年の調査では、全産業の改定額が13,926円(前年13,601円)、改定率が4.4%(前年4.4%)だった。

産業改定額改定率
全産業13,926円4.4%
建設業20,599円5.5%
生活関連サービス業、娯楽業9,210円3.5%
運輸業、郵便業8,815円3.0%
医療、福祉8,540円3.3%

出典:厚生労働省「令和8年賃金引上げ等の実態に関する調査」第2表(改定額が最も多い産業と、少ない3産業を抜粋。予定を含む)

15の産業で改定額が最も多いのは建設業の20,599円で、医療、福祉の8,540円が最も少ない。次に少ないのが運輸業、郵便業の8,815円、生活関連サービス業、娯楽業の9,210円である。

ちはる

医療・福祉も賃上げは進んでいると聞いていたのに、額は一番少ないんですね。

熊先生

前年の5,589円からは増えたけど、15産業の中では8,540円が最少だったね。

ちはる

上がってはいても、ほかの産業との差は残っているということですね。

改定率は3.3%、全産業は4.4%

改定率は、改定額を改定前の1人平均賃金で割ったものである。医療、福祉の改定率は3.3%で、前年の2.3%から上がった。ただし全産業の4.4%には届かない。15の産業で医療、福祉より改定率が低いのは、運輸業、郵便業の3.0%だけだった。

改定額と改定率は、常用労働者数で重みをつけた平均である。賃金の改定を実施した企業と予定していて額も決まっている企業に加え、改定を実施しない企業も含めて計算している。9〜12月に予定している分も含む。

引き上げた企業は95.8%に増加

一方で、賃金を上げる企業の割合は高い。医療、福祉で「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」企業は95.8%で、前年の84.9%から増えた。全産業の92.0%(前年91.5%)を上回っている。賃金の改定を実施しない企業は医療、福祉では「-」(該当なし)で、未定が4.1%だった。

改定の時期をみると、医療、福祉では「1〜8月のみ」が69.5%、「9〜12月のみ」が12.3%、「1〜8月及び9〜12月」が14.1%だった。全産業では「1〜8月のみ」が79.0%で、医療、福祉は年の後半に改定する企業の割合が比較的高い。

ちはる

賃金を上げた企業の割合は、全産業より高いんですね。

熊先生

医療、福祉は95.8%で、全産業の92.0%を上回っていたよ。

熊先生

それでも1人あたりの額は8,540円で、15産業の中で最も少なかった。

ちはる

上げる職場は多いけれど、上げ幅は小さいということですね。

ベースアップは48.7%

賃上げの中身も見ておく。医療、福祉で定期昇給制度がある企業は83.8%で、定期昇給を「行った・行う」企業は75.5%だった。全産業ではそれぞれ84.2%、81.2%である。

賃金表を書き換えて賃金の水準そのものを上げるベースアップ(ベア)は、定期昇給制度がある企業の中で、医療、福祉では48.7%が「行った・行う」と答えた。全産業の57.9%を下回る。定期昇給とベアの区別がない企業は、医療、福祉では29.9%と、全産業の24.7%より多かった。

定期昇給は、勤続年数や評価に応じて毎年決まった時期に上がる昇給である。ベアは、賃金表そのものを改めて全体の水準を引き上げること。同じ「賃上げ」でも意味が違う。

対象は100人以上の会社組織の企業

数字を読むときは、調査の範囲に注意が要る。対象は、常用労働者100人以上を雇用する会社組織の民営企業である。2026年は3,668社を抽出し、1,862社から有効回答を得た(有効回答率50.8%)。調査は7月20日から8月10日に行われた。

また、この調査の「常用労働者」は、雇用期間を定めずに雇われている人で、期間を定めて雇われている人や、契約を更新している人は含まない。期間を定めて雇われている人の賃上げは、この数字には入っていない。

ほかの統計とは出し方が違う

医療・福祉の賃金については、ほかの統計でも数字が出ている。毎月勤労統計調査では、医療・福祉の8月の現金給与総額が前年同月比4.1%増だった(8月の毎月勤労統計の記事)。介護関係の17団体が行った緊急調査では、介護の賃上げ率が3.93%とされた(17団体の調査の記事)。

これらは、対象も、何を賃金とみるかも、時点も違う。今回の調査は、企業が1年の賃金改定で1人あたりの所定内賃金をいくら上げたかを聞いたもので、残業代や賞与が入る毎月勤労統計の給与総額とは比べられない。数字どうしを並べて大小を比べることはせず、それぞれの調査の中で読む必要がある。

ちはる

統計によって数字が違うのは、調べ方が違うからなんですね。

ちはる

応募先では、去年どれだけ基本給が上がったかを聞いてみます。

迷ったらここ

昇給の実績を聞く

同じ業界でも、賃上げの額と中身は勤め先で違います。応募先では求人票の給与だけでなく、昇給の実績を聞いておくと比べやすくなります。

  • 昨年度、基本給が平均いくら上がったか
  • 定期昇給とベースアップのどちらで上がったか
  • 処遇改善の加算や手当がどう配られているか
  • 昇給の時期は年に何回、いつか
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編集部の見方:上げる職場は多い、幅は小さい

ここからは編集部の見方である。2026年の医療、福祉は、賃金を引き上げた企業が95.8%と全産業を上回った一方、1人あたりの改定額は8,540円で15産業の最少だった。賃上げをする職場は多いが、上げ幅は他の産業より小さいという形である。ベアをした企業の割合も全産業より低く、水準そのものを押し上げる動きは他産業ほど広がっていない。

ただ、この調査の対象は100人以上の会社組織の民営企業に限られ、医療法人や社会福祉法人が運営する病院や施設の賃上げがどう反映されているかは、概況には書かれていない。2027年度の介護報酬改定の議論もこれからである。働く側にできるのは、応募先ごとに昇給の実績と仕組みを確かめることだ。

出典

一次資料

編集部メモ

  • 改定額と改定率は、9〜12月の予定を含む数字です。賃金の改定を実施した・予定していて額も決定している企業と、改定を実施しない企業についての、常用労働者数による加重平均です。
  • 「医療、福祉」は日本標準産業分類の大分類で、職種別の数字はこの調査にはありません。介護・看護・保育・栄養士を分けた数字は出せません。
  • 15産業の中で最少・最多かどうかは、第2表の15産業の改定額を並べて確かめました。
  • 前年(2025年)の数字は、今回の第1表・第2表に載っている前年の値を使っています。
  • 夏の賞与の支給状況(第8表)は、表の年の見出しの並びが確認しきれなかったため、本文では扱っていません。
  • 7月の毎月勤労統計の記事にある「3.3%増」は、現金給与総額の前年同月比で、今回の改定率3.3%とは別の数字です。
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この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

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