介護の処遇改善加算、最上位は39.3% 勤め先で賃上げ幅に差

給与明細書と電卓。2026年6月の介護報酬改定で処遇改善加算が引き上げられた
目次

30秒でわかるまとめ

  • 介護職の賃上げは2026年6月に実施済みです令和8年度介護報酬改定は次の改定を待たない期中改定で、改定率は+2.03%、うち処遇改善分が+1.95%でした。
  • 上がる幅は勤め先の処遇改善加算の区分で変わります最上位の区分を算定した事業所は39.3%、加算そのものを取っていない事業所は4.2%でした。
  • 訪問看護と居宅介護支援は今回が初めての対象です新たに対象となった4サービスの算定率は71.6%で、従来からの対象サービスの95.8%を下回りました。
  • 面接では応募先の加算区分まで確認できます求人票に区分は載りません。訪問介護では最上位28.7%、最下位17.0%と加算率に差があります。

厚生労働省は2026年8月28日、社会保障審議会介護給付費分科会(第263回)に資料「介護人材確保に向けた処遇改善等」を示した。令和9年度の介護報酬改定に向けた議論の入口にあたる。同じ資料には、2026年6月に施行された賃上げがどの事業所にどこまで届いたかの実績も載っている。ここでは原典だけを読み、介護の現場で働く人から見て何が起きたのかを整理する。

2026年6月、改定を待たずに引き上げ

令和8年度介護報酬改定は、令和9年度の改定を待たずに行われた期中改定である。資料には「令和9年度介護報酬改定を待たずに、期中改定を実施する」と書かれている。施行は2026年6月だった。

改定率は+2.03%。内訳は処遇改善分が+1.95%、介護保険施設等の食費の基準費用額の引上げ分が+0.09%である。国費への影響額は+518億円とされている。

賃上げの中身は2階建てになっている。

措置対象額(率)
幅広い賃上げ介護従事者月1.0万円(3.3%)
上乗せ生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員月0.7万円(2.4%)
(内数)定期昇給—月0.2万円
合計介護職員最大 月1.9万円(6.3%)

出典:厚生労働省 第263回社会保障審議会介護給付費分科会 資料1

1.9万円は「最大」である。上乗せ分は生産性向上や協働化に取り組む事業者に限られ、合計には定期昇給0.2万円も含まれている。

対象そのものも広がった。これまで処遇改善加算は介護職員だけを対象にしていたが、今回から介護従事者へ拡大された。加算の対象外だった訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援、介護予防支援にも、新たに処遇改善加算が創設されている。

ちはる

6月から、介護の仕事はみんな月1.9万円上がったということでしょうか。

熊先生

そう読めてしまうよね。でもこれは「最大」で、上乗せには別の条件があるんだ。

ちはる

条件を満たしているかどうかは、事業所によって違うということですか。

95.8%が加算を取り、区分は割れている

資料には、2026年6月サービス提供分の算定状況が載っている。事業所・施設の申請にもとづく事業所台帳情報から、厚生労働省老健局老人保健課が作成したものである。

区分算定した事業所の割合
加算Ⅰイ8.3%
加算Ⅰロ(今回新設。上乗せあり)39.3%
加算Ⅱイ11.3%
加算Ⅱロ(今回新設。上乗せあり)25.8%
加算Ⅲ8.6%
加算Ⅳ2.6%
合計95.8%

出典:同資料。令和8年度改定以前から処遇改善加算の対象だったサービスの合計(予防を含む)

95.8%という水準は高い。差し引き4.2%は、加算そのものを取っていない事業所ということになる。

目を引くのは区分の割れ方のほうである。上乗せのある加算Ⅰロが39.3%、加算Ⅱロが25.8%。一方で加算Ⅲが8.6%、加算Ⅳが2.6%ある。サービス別の幅も大きく、最も高いのは介護老人福祉施設サービスの99.5%、最も低いのは通所リハビリテーションの84.6%だった。訪問介護は94.8%である。

区分の違いは、事業所に入る額の違いになる。訪問介護の加算率は次のとおり。

区分加算率(訪問介護の場合)
加算Ⅰロ28.7%
加算Ⅰイ27.0%
加算Ⅱロ26.6%
加算Ⅱイ24.9%
加算Ⅲ20.7%
加算Ⅳ17.0%

出典:同資料

加算率は、処遇改善加算を除く加減算後の総報酬単位数に乗じる率である。加算Ⅰロと加算Ⅳでは28.7%と17.0%の差がある。ただしこれは事業所に入る加算の率であって、個人の給与がその比で決まるわけではない。

今回から対象になった4サービスは、算定率が低い。

サービス算定率加算率
介護予防支援76.9%2.1%
居宅介護支援76.0%2.1%
訪問看護67.6%1.8%
訪問リハビリテーション59.8%1.5%
合計(予防を含む)71.6%—

出典:同資料

従来からの対象サービスが95.8%であるのに対し、新たに対象となった4サービスは71.6%にとどまる。訪問リハビリテーションは59.8%で、6割を下回った。

制度の対象になったことと、勤め先が実際に算定していることは別である。

ちはる

加算を取っている事業所が95.8%なら、ほとんど行き渡っていませんか。

熊先生

数のうえではそうだね。ただ中身は、上の区分から下まで割れているんだ。

ちはる

区分が違えば入る額も違う……ということは、勤め先で幅が変わるのでしょうか。

熊先生

うん。訪問介護なら、さっき出した加算率の差がそのまま効いてくる。

それでも全産業平均との差は8.2万円ある

資料には賃金の水準も載っている。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」による、一般労働者(男女計)の賞与込み給与である。

区分平均年齢勤続年数賞与込み給与
産業計(役職者を除く)43.4歳10.8年39.6万円
介護職員45.5歳8.5年31.4万円
訪問介護従事者51.1歳8.2年30.7万円
介護職員(医療・福祉施設等)45.1歳8.5年31.4万円
介護支援専門員(ケアマネジャー)53.4歳11.2年34.7万円

出典:同資料(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」にもとづき老健局老人保健課が作成)。産業別賃金は10人以上規模企業における役職者を除いて算出されている

産業計と介護職員の差は8.2万円。介護職員は産業計の79.3%にあたる(編集部が算出)。平均年齢は介護職員のほうが2.1歳高く、勤続年数は2.3年短い。資料も「累次の取組により改善しているが、依然全産業平均との差がある状況である」と記している。

賃上げそのものは進んでいる。令和6年度介護従事者処遇状況等調査では、加算を取得している施設・事業所の介護職員(月給・常勤の者)の基本給等が、令和5年9月の242,680円から令和6年9月の253,810円へ11,130円の増(+4.6%)となった。平均給与額は324,240円から338,200円へ13,960円の増(+4.3%)である。

ただし、これは令和6年度改定の実績である。2026年6月の措置がいくらの賃上げになったかは、この資料には載っていない。資料には「令和8年度介護従事者処遇状況等調査」を実施中で、「本年秋頃に取りまとめを行う」と書かれている。

いま公表されているのは令和6年度改定の実績である。2026年6月の賃上げの結果は、秋の調査を待つことになる。

周囲の相場も動いている。資料は2026年の春季労使交渉について「賃上げ率が5.01%(賃上げ分が明確に分かる組合の賃上げ分は3.50%)となり、3年連続の5%超を記録する」と記している。地域別最低賃金の全国加重平均は、中央最低賃金審議会が示した目安どおりに改定された場合、2026年度に1,176円となる。

【2026年9月7日 追記】その後、2026年9月3日に全ての都道府県で改定額が答申された。全国加重平均は1,177円で、上記の目安を1円上回って確定している。発効は令和8年10月1日から12月2日までの間に、都道府県ごとに順次となる。詳しくは「最低賃金1,177円に確定 介護の時給が上がる日は県で違う」で扱っている。

人手の不足も続いている。令和8年6月の有効求人倍率は、介護関係職種が3.76倍、職業計が1.01倍だった。令和7年度介護労働実態調査では、従業員が不足していると答えた事業所の割合が、訪問介護員で82.9%、介護職員で69.8%にのぼる。

2027年度の改定では加算の整理が論点

資料の末尾に、令和9年度改定に向けた論点が挙げられている。

論点資料の記述働く側から見ると
処遇改善の考え方他職種と遜色のない処遇改善の実現を図る賃上げの方向そのものは続く
加算の取得の進展加算Ⅰ及びⅡの取得の進展を踏まえた対応、事業所・施設の事務負担軽減の必要性上位区分が当たり前になれば、区分の意味が変わりうる
報酬体系の簡素化加算の種類が増加するとともに、加算の取得要件が複雑化している加算の数え方そのものが変わりうる

出典:同資料「介護人材確保に向けた処遇改善等に係る現状と課題」

同時に、財源の制約も明記されている。経済財政運営と改革の基本方針2026(令和8年7月21日閣議決定)には「2027年度の社会保障負担率が2025年度と比較して上昇しないよう取り組む」とある。資料は、介護サービスの適正化や重点化、保険料や利用者等の負担も念頭に置いた見直しを引き続き検討する必要がある、とも記している。

編集部の見方:2つの話が混ざっている

ここからは編集部の見方である。ここまでは資料に書かれている事実で、以下は解釈にあたる。

この資料を通して読むと、「介護の給料が上がった」という言い方が、性質の違う2つを混ぜていると分かる。

1つは制度の話である。2026年6月に加算が引き上げられ、対象も介護従事者へ広がった。訪問看護や居宅介護支援も対象に加わった。これは全国一律に起きたことである。

もう1つは事業所の話である。どの区分を算定するかは事業所ごとに決まり、上乗せのある区分には生産性向上や協働化の取組が条件になる。算定率は95.8%でも、区分は加算Ⅰロの39.3%から加算Ⅳの2.6%まで割れている。制度が動いたことと、自分の給与明細が動くことは、同じではない。

そのうえで、この資料から言えないことも書いておく。事業所がどの区分を算定しているかと、そこで働く人の給与額との関係は、この資料には載っていない。加算は事業所に入るもので、配分の方法は事業所ごとに違う。「加算Ⅰロの事業所=給料が高い」とは言えない。ここは資料の範囲を超える。

言えるのは、確認できる項目が1つ増えたということである。処遇改善加算は届出にもとづくもので、事業所は自分がどの区分を算定しているかを把握している。求人票には載らないが、聞けば答えられる性質の情報である。

ちはる

賃上げのニュースを見て、勝手に上がるものだと思っていました。

熊先生

制度は動いたからね。あとは勤め先次第。そこを一つ聞いてみるといいよ。

迷ったらここ

応募先に「処遇改善加算の区分」を聞く

加算を算定している事業所は全体で95.8%ですが、最上位の加算Ⅰロは39.3%にとどまります。訪問介護では加算Ⅰロと加算Ⅳで加算率が28.7%と17.0%の差があります。届出にもとづく情報なので、事業所は自分の区分を把握しています。

  • 処遇改善加算のどの区分を算定しているか(Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳ)
  • 上乗せのある区分なら、生産性向上や協働化の取組として何をしているか
  • 加算分をどこに配分しているか(基本給・手当・賞与のどれか)
介護の転職サービスを比較する

出典

編集部メモ

  • 記事に載せた数値は、すべて厚生労働省の資料から直接取り、編集部で計算し直して確かめています。加算の区分ごとの算定率については、各区分を足し上げると公表されている合計と一致することを、18のサービスと合計欄のすべてで確認しました。
  • 「4.2%」「8.2万円」「79.3%」は、公表されている数字どうしを引き算・割り算して出したものです。原本にそのままの記載はありません。
  • 地域別最低賃金の1,176円は、確定した金額ではありません。原本に「中央最低賃金審議会が示した目安どおりに改定された場合」という条件が付いています。本文にもこの条件を書きました。
  • 2026年6月の措置が実際にいくらの賃上げになったかは、この資料では分かりません。「令和8年度介護従事者処遇状況等調査」を本年秋ごろに取りまとめる予定、と書かれているだけです。
  • 加算の区分と、そこで働く人の給与額との関係は、この資料には載っていません。本記事では扱っていません。
  • 賃金の推移を示したグラフは、どの年がどの値なのかを原本から確実に読み取れなかったため使いませんでした。賃金については、表になっているページの数字だけを使っています。
  • 介護福祉士の配置などを評価するサービス提供体制強化加算も論点に挙がっていますが、求職者が自分で動かせる材料ではないため、本記事では扱いませんでした。
  • 報道各社の記事は参照していません。数値も記述も、すべて原典から取っています。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

目次