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30秒でわかるまとめ
- 病院68.7%、訪問看護73.2%が賃金を引き上げました日本看護協会が10月27日に公表した緊急調査の結果です。どちらも前年度より増え、約7割が2026年度に賃上げをしました。
- 賃上げ率が5%以上だった病院は13.0%です最も多いのは「1〜2%未満」でした。民間企業を対象にした別の調査では、5%以上が大企業で41.4%でした。
- 正規の看護職員の基本給は、病院で7,261円増えました2026年8月の平均は274,754円です。介護保険施設・事業所は1,279円増で、勤め先によって差があります。
- 賃金に「不満」と答えた看護職員は5割強です「やや不満」を合わせると約8割です。不満の強い人ほど、看護職として働き続けたいと答えた割合が低くなっています。
日本看護協会は10月27日、「看護職員の賃上げに関する緊急調査」の結果を公表した。2026年度に賃金を引き上げた病院は前年度より増えたが、賃上げ率は「1〜2%未満」が最も多い。正規雇用の看護職員の基本給は、病院で前年同月より7,261円増えた一方、介護保険施設・事業所では1,279円増にとどまった。看護師が職場を選ぶときにどう関わるかを整理する。
病院の68.7%、訪問看護の73.2%が賃金を引き上げ
調査は協会がWebアンケートで、2026年9月1日から14日に行った。病院の看護部長などに聞いた病院調査は3,908施設、訪問看護事業所の所長などに聞いた訪問看護調査は1,925事業所が答えた。看護職員本人への調査には38,736人(病院34,452人、訪問看護事業所1,896人、介護保険施設・事業所2,388人)が答えた。
2026年度に「賃金を引き上げた」と答えたのは、病院が68.7%(前年度58.6%)、訪問看護事業所が73.2%(同56.6%)。「変更なし」は病院23.8%、訪問看護事業所19.7%で、「賃金を引き下げた」も病院0.9%、訪問看護事業所0.5%あった。
引き上げた施設・事業所に中身を聞くと(複数回答)、ベースアップ(基本給の増額)が病院76.2%(前年度比9.1ポイント増)、訪問看護事業所70.3%(同8.9ポイント増)で最も多かった。2026年度の診療報酬改定でベースアップ評価料などの対象として明示された夜勤手当の増額は、病院で13.9%(前年度比9.4ポイント増)だった。
7割の病院が賃金を上げたなら、看護師の給料はしっかり上がっているんですね。
上げた病院の割合と、どれだけ上げたかは別の話なんだ。次は上げ幅を見てみよう。
上げたかどうかだけでは、自分の給料がどうなったかはわからないんですね。
賃上げ率は「1〜2%未満」が最も多い
2026年度の賃上げ率を答えた病院(1,703施設)と訪問看護事業所(901事業所)の分布は次のとおり。
| 賃上げ率 | 病院 | 訪問看護 |
|---|---|---|
| 5%以上 | 13.0% | 18.4% |
| 4〜5%未満 | 12.5% | 9.9% |
| 3〜4%未満 | 19.1% | 13.4% |
| 2〜3%未満 | 18.6% | 19.3% |
| 1〜2%未満 | 20.3% | 25.9% |
| 1%未満 | 16.6% | 13.1% |
出典:日本看護協会「看護職員の賃上げに関する緊急調査」結果(図表9)をもとに編集部作成
病院も訪問看護事業所も「1〜2%未満」が最も多く、それぞれ20.3%、25.9%だった。「5%以上」は病院13.0%、訪問看護事業所18.4%にとどまる。協会は、2026年度診療報酬改定で掲げた賃上げの目標水準3.2%や、臨時の介護報酬改定で掲げた「介護職員のみならず介護従事者を対象に幅広く月1万円(3.3%)の賃上げ」に、半数以上の病院・訪問看護事業所が達していないとみている。
資料は参考として、東京商工リサーチの「2026年度賃上げに関するアンケート」(2026年8月実施)の数字も並べている。民間企業の賃上げの実施率は大企業93.8%、中小企業82.3%で、賃上げ率「5%以上」は大企業41.4%、中小企業42.6%だった。協会は、病院・訪問看護事業所の賃上げは実施率・賃上げ率ともに「他産業には遠く及ばない」とまとめている。
民間企業の数字は、対象も聞き方も違う別の調査のものだ。資料も「参考」として並べている。比べるときは、おおまかな差をつかむ目安として見たい。
基本給は病院で7,261円増、介護保険施設等は1,279円増
看護職員調査では、正規雇用(フルタイム)の看護職員の2026年8月分の給与を、前年の同じ月と比べている。どちらかの年に休暇・休職中だった人や、この1年の間に転職した人は、平均の計算から外している。
| 就業先 | 2026年8月の基本給 | 前年同月から |
|---|---|---|
| 病院 | 274,754円 | 7,261円増 |
| 訪問看護事業所 | 258,237円 | 2,913円増 |
| 介護保険施設・事業所 | 251,707円 | 1,279円増 |
出典:日本看護協会「看護職員の賃上げに関する緊急調査」結果(図表11)をもとに編集部作成。平均の対象は病院18,424人、訪問看護事業所809人、介護保険施設・事業所947人。介護保険施設・事業所は訪問看護以外の介護保険サービスの施設・事業所
税込みの給与総額の平均は、病院400,885円、訪問看護事業所375,189円、介護保険施設・事業所354,100円だった。平均年齢は病院38.2歳、訪問看護事業所43.5歳、介護保険施設・事業所47.1歳で、働く人の年齢の構成も違う。
給与が前年同月より「増加した」と答えた人は全体で68.1%、「減少した」は6.1%だった。就業先別の「増加した」は、病院68.9%、訪問看護事業所62.7%、介護保険施設・事業所60.8%だった。
年齢をそろえても病院の給与が高い
正規雇用の看護職員の年齢別の平均税込給与総額(2026年8月)は次のとおり。訪問看護事業所と介護保険施設・事業所の20〜24歳は、回答者が少ないため資料に載っていない。
| 年齢 | 病院 | 訪問看護 | 介護保険施設等 |
|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 337,318 | - | - |
| 25〜29歳 | 360,262 | 342,049 | 312,409 |
| 30〜34歳 | 378,142 | 351,065 | 322,492 |
| 35〜39歳 | 397,452 | 353,251 | 326,285 |
| 40〜44歳 | 415,135 | 386,225 | 336,695 |
| 45〜49歳 | 435,402 | 387,752 | 357,040 |
| 50〜54歳 | 454,477 | 387,532 | 370,614 |
| 55〜59歳 | 476,854 | 412,074 | 380,523 |
| 60〜69歳 | 448,108 | 375,862 | 379,738 |
出典:日本看護協会「看護職員の賃上げに関する緊急調査」結果(図表16)をもとに編集部作成。単位は円
協会は、すべての年齢層で訪問看護事業所と介護保険施設・事業所の平均給与が病院を下回り、その差は年齢層が上がるにつれて広がるとしている。
前年からの基本給の変化は年齢層でばらつく。病院の60歳代(6,475円減)、訪問看護事業所の25〜29歳(3,377円減)、介護保険施設・事業所の55〜59歳(3,760円減)のように、減った層もある。
同じ看護師でも、働く場所で基本給の増え方がずいぶん違うんですね。
そうだね。ただ、働く人の平均年齢も、場所ごとに違うんだ。
だから年齢をそろえて比べられるように、年齢別の表があるんだよ。
年齢をそろえても、どの年代も病院のほうが高いんですね。
増えた理由に時間外勤務や夜勤の増加も
給与が増えた正規雇用の看護職員に理由を聞くと(複数回答)、ベースアップが病院55.2%、訪問看護事業所50.2%、介護保険施設・事業所50.6%で最も多かった。
一方で、「時間外勤務や夜勤回数・オンコール対応回数の増加」も病院31.7%、訪問看護事業所29.4%、介護保険施設・事業所19.9%あった。給与が増えた人のなかには、働く時間や回数が増えた分で増えた人もいることになる。
給与が減った人の理由は、時間外勤務や夜勤回数、オンコール対応回数の減少が病院47.2%、訪問看護事業所49.4%、介護保険施設・事業所56.0%で最も多い。基本給が引き下げられた「ベースダウン」は、病院5.9%、訪問看護事業所8.4%、介護保険施設・事業所7.0%だった。
病院調査では、病院の84.4%がベースアップ評価料などの診療報酬上の評価を算定していた。その分の支給方法(複数回答)は、「毎月決まって支払われる手当に含めて支給」が69.1%で最も多く、「基本給に含めて支給」は32.4%だった。同じ賃上げでも、基本給に入るか手当で払われるかは病院によって違う。
賃金に「不満」は5割強、働き続ける意向にも差
賃金への満足度は、就業場所による差がほとんどない。「不満」は病院51.4%、訪問看護事業所51.1%、介護保険施設・事業所51.0%で、協会は「やや不満」(それぞれ25.0%、25.3%、24.5%)と合わせて約8割が不満と答えたとまとめている。
満足度は、働き続けたいかという意向とも関係している。「看護職として働き続けたい」に「とてもそう思う」と答えた人は、賃金に「満足」の人で48.8%、「不満」の人で12.9%。「まったくそう思わない」は「満足」の人で1.4%、「不満」の人で23.2%だった。いまの就業先で働き続けたいかでも、同じ傾向が出ている。
協会は、賃金への不満が看護職員の他産業への流出につながりかねないとして、2027年度の予算や介護報酬改定、診療報酬の期中改定などでの対応を国に求めていくとしている。
給料への不満は、この仕事を続けるかどうかにもつながっているんですね。
求人を見るときは、基本給と手当の内訳、それに去年からの上がり方が手がかりになるよ。
迷ったらここ
給与の内訳と昇給を聞く
賃上げの額や形は、勤め先の種類や病院ごとの配り方で変わります。いまの職場や応募先で、次の点を聞いておくと比べやすくなります。
- 基本給と、毎月決まって払われる手当の内訳
- 今年度の賃上げが、基本給と手当のどちらで払われているか
- 去年から今年にかけての昇給の実績
- 夜勤やオンコールの回数と、その手当の金額
編集部の見方:基本給の伸びを勤め先ごとに見る
ここからは編集部の見方である。この調査は、看護職員の処遇改善を国に求める立場の協会がまとめたもので、要望の根拠として示された数字だ。それでも、同じ看護職員でも勤め先によって基本給の伸びに差があることは、職場を選ぶ人にとって知っておく価値がある。
もう1つは、給与が増えた理由として、病院と訪問看護事業所の約3割が時間外勤務や夜勤・オンコールの回数の増加を挙げた点だ。給与の総額だけを見ると、働く量が増えた分も混ざる。職場を比べるときは、基本給と手当、夜勤などの回数を分けて確かめたい。国の統計で見た医療・福祉の賃上げは賃上げの実態調査の記事で、夜勤手当の長い推移は看護師の夜勤手当の記事で整理している。
出典
一次資料
- 公益社団法人日本看護協会「看護職員の賃上げに関する緊急調査 結果」(ニュースリリース、PDF、2026年10月27日、2026年10月30日参照)
- 東京商工リサーチ「2026年度の『賃上げ』 83.2%の企業で実施 賃上げ率5%以上、中小企業が大企業を上回る」(TSRデータインサイト、2026年8月14日、2026年10月30日参照)
編集部メモ
- この記事の数字は、日本看護協会がWebアンケートで集めた結果です。国の統計ではありません。答えた施設・事業所や看護職員が、全国の平均を表しているとは限りません。
- 病院・訪問看護事業所の賃上げの状況と賃上げ率は、看護部長や所長などが施設・事業所として答えたものです。看護職員一人ひとりの賃上げ率ではありません。
- 民間企業の数字は、協会の資料が参考として引いている東京商工リサーチの調査(2026年7月31日〜8月11日、有効回答5,909社)のもので、原典でも同じ数字であることを確かめました。対象・時期・賃上げの定義が違うため、目安として扱ってください。
- 基本給の前年同月からの増加額は、資料の文章に書かれた値を使っています。
- 資料の文章と年齢別の表の値が合わない箇所が2つありました。1つは年齢層ごとの給与の差で、文章には病院と訪問看護事業所で約2.8〜5.4万円、病院と介護保険施設・事業所で約6.4〜7.7万円とありますが、表の値からはこの幅を確かめられませんでした。もう1つは訪問看護事業所の基本給の増加額で、文章は30歳以上で2,040円〜7,803円としていますが、表では60歳代は1,838円の増加です。本文ではどちらも表の値に沿って書いています。
- 「約8割」は協会の表現です。「不満」と「やや不満」を足すと、病院76.4%、訪問看護事業所76.4%、介護保険施設・事業所75.5%になります(資料の値から編集部が計算)。
- 報道各社の記事は参照していません。数値も記述も、すべて原典から取っています。

