ケアマネの安全対策に49億円を概算要求 同行訪問や防犯機器を補助へ

ケアマネの安全対策に49億円を要求
目次

30秒でわかるまとめ

  • ケアマネの安全対策に国が49億円を要求しました来年度予算の概算要求に、ケアマネジャーが安心して働ける環境づくりを支援する新しい事業が入りました。
  • 利用者宅への同行者を派遣する費用も補助の対象ですハラスメントへの備えや防犯機器の購入、地域の関係者とのネットワークづくりが挙がっています。
  • 訪問介護などの在宅系には13億円の安全対策です防犯カメラやGPS、防護ベストのほか、必要と判断した場合の複数名での同行訪問が対象です。
  • どちらもまだ決まった予算ではありませんいずれも概算要求の段階で、年末の予算編成で額が変わる可能性があります。

厚生労働省が財務省に出した令和9年度予算の概算要求に、介護で働く人の安全を守るための新しい事業が2つ入っている。1つはケアマネジャー向け、もう1つは訪問介護などの在宅系サービス向けである。10月1日からはカスタマーハラスメント対策が事業主の義務になる。ここでは厚労省老健局の概算要求の資料を読み、利用者の自宅を訪ねて働く人・これから移る人から見て何が用意されようとしているのかを整理する。

在宅で働く人の安全に新しい補助

老健局の令和9年度の概算要求は、局の計上分で3兆5,787億円、前年度の当初予算から1,085億円増の3.1%増である。その大半は介護保険の給付だが、なかに「新規」と付いた事業がいくつかある。

新規事業要求額
ケアマネジャーが安心して働ける環境づくり支援事業49億円
地域の訪問介護等体制づくり支援事業34億円
 うち在宅系サービス継続のための安全対策推進支援13億円

出典:厚生労働省老健局「令和9年度概算要求の概要」および同 参考資料

資料は事業の目的として、利用者宅などでの犯罪被害、暴力行為、著しい迷惑行為を挙げ、「特に屋外移動を伴う訪問系サービス」で従事者の安全の確保が課題になっていると書いている。

この2つは令和7年度の補正予算でも先に計上されている。ケアマネ向けが14億円、訪問介護等の体制づくりが56億円である。

ちはる

訪問先での安全は、それぞれの事業所が工夫するものだと思っていました。

熊先生

そこに国がお金を出す、という事業が要求に入ったんだ。

ちはる

何に使えるお金なのか、中身を知りたいです。

ケアマネ向けは49億円を要求

ケアマネジャー向けの事業について、資料は背景をこう書いている。

近年、ケアマネジャーが利用者やその家族等からハラスメントの被害に遭うケースも報告されており

事業の中身は4つに分かれている。

  • ①安心して働ける体制の確保 ハラスメントへの体制整備、防犯対策、複数名での同行訪問
  • ②人口減少地域の提供体制の確保 中山間・離島での採用活動や、遠隔地へのサービス提供の支援
  • ③業務負担の軽減 いわゆるシャドウワークへの対応や、事務の業務のタスクシフト
  • ④人材の確保 復職後の相談対応や研修、「潜在ケアマネジャー」の実態把握

出典:厚生労働省老健局「令和9年度概算要求の概要(老健局)の参考資料」

実施するのは都道府県・指定都市・中核市で、国が3分の2を補助する。①の安全確保だけは定額補助とされている。

②の人口減少地域向けには、その地域での採用活動の支援、遠隔地へのサービス提供のためのICTなどの体制整備、利用者確保のための広報、小規模な事業所の加算の新規取得や経営改善の支援が例に挙がっている。ケアマネが足りない地域で、採用そのものにお金を出すという中身である。

同行者の派遣費用も補助の対象

①の補助の対象として資料が例に挙げているのは、次のものである。

  • ケアマネジャーが利用者宅を訪問する際に、同行者を派遣するための費用
  • 防犯機器等の購入
  • 安全確保・ハラスメント対策に係る地域の関係者とのネットワーク体制の構築

ケアマネジャーは、利用者の自宅を1人で訪ねることが多い仕事である。訪問に誰かが付き添う費用が補助の対象に挙がっているのは、働く人から見て具体的な変化になりうる。

この補助を使うかどうかを決めるのは自治体である。国の予算が付いても、住んでいる地域で事業が行われるとは限らない。

訪問介護などには13億円

もう1つは、訪問介護などの在宅系サービス事業所に向けた安全対策である。要求額は13億円で、実施するのは都道府県と市区町村、国の補助率は3分の2である。

資料は目的のなかで、自然災害の激甚化や野生鳥獣による被害にも触れている。暑さ対策の品や鳥獣対策の機器が並んでいるのはそのためである。人からの被害と、屋外を移動する仕事ならではの危険の両方を対象にしている。補助の対象は3つに分けて示されている。

対象資料に挙がっている例
事業所防犯カメラ、センサーライト、サーキュレーター、断熱カーテン
従事者GPS、防護ベスト、ICレコーダー、護身用スプレー、鳥獣対策用の音声機器
カスハラ対策必要と判断した場合の複数名での同行訪問、警察や法律の専門家との協議会

出典:同上

ここでも複数名での同行訪問が入っている。事業所や市町村が「必要と判断した場合」という条件つきである。

この新事業は、介護ニュースJointが9月8日に報じている。

ちはる

ケアマネも訪問介護も、同行訪問が補助の対象に入っているんですね。

熊先生

うん。2つの事業に、同じ考え方が入っている。

熊先生

ただ、どちらも「必要と判断した場合」などの条件が付いているよ。

ちはる

1人で行かなくていい場面を、職場がどう決めているかが大事になりますね。

シャドウワークの負担軽減も入った

ケアマネ向けの事業には、安全対策とは別に、シャドウワークへの手当ても入っている。資料はこれを「ケアマネジャーがこれまでやむを得ず行ってきた法定外業務(いわゆるシャドウワーク)」と書いている。

補助の対象の例は、公共的な団体による業務の受け皿づくり、シャドウワークに関する相談窓口の設置、事務職員の採用支援である。本来の業務以外に抱えてきた仕事を、別の受け皿や事務職員に移すための費用、という位置づけになっている。

人材の確保では、復職後の相談対応や研修・OJTと、資格を持ちながらケアマネとして働いていない「潜在ケアマネジャー」の実態把握が挙がっている。いったん離れた人が戻るときの支えが、補助の対象に入った形である。

まだ決まった予算ではない

ここまでの額は、すべて概算要求である。各省が財務省に「これだけ必要」と出した段階で、年末の予算編成で額が変わったり、事業の形が変わったりすることがある。

一方で、事業主の義務のほうは日付が決まっている。改正法の施行で、10月1日からカスタマーハラスメント対策の措置が事業主に義務づけられる。介護事業所も対象である。義務の中身は病院のカスハラ対策の記事で整理した。訪問介護のヘルパーの56%が利用者や家族からハラスメントを受けていたという団体の調査は、訪問介護の記事で取り上げている。

義務は10月1日から、補助は決まれば来年度からである。義務が先に始まる。

編集部の見方:1人で訪問しない仕組み

ここからは編集部の見方である。

2つの事業に共通しているのは、「1人で訪問する」ことを前提にしない考え方が、補助の対象として書き込まれた点である。ケアマネ向けには同行者の派遣費用、在宅系には必要な場合の複数名での同行訪問が挙がっている。

ただし、どちらも自治体が事業を行い、事業所や市町村が必要と判断して初めて使われる。予算が付くことと、自分の職場で同行訪問ができることのあいだには、いくつも段がある。

だから求人を見るときに効くのは、制度の有無よりその事業所が実際にどう運用しているかである。10月1日からカスハラ対策が義務になるので、方針や相談窓口については答えを持っている事業所が増えるはずである。そこに「どういう場合に2人で訪問するか」を足して聞くと、現場の運用が見えやすい。

なお、年末の予算編成でこの2つの事業がどうなるかは、まだ分からない。

ちはる

2人で訪問する基準を聞くのは、失礼にならないでしょうか。

熊先生

国の事業にも出てくる話だからね。聞いてよい問いだよ。

迷ったらここ

どういうときに2人で訪問するのかを聞く

国はケアマネ向けに49億円、訪問介護などに13億円の安全対策を要求し、同行訪問の費用を補助の対象に挙げました。使うかどうかは自治体と事業所の判断です。制度より、その事業所の運用を確かめてください。

  • 危ないと感じた利用者宅に、2人で訪問する決まりはあるか
  • 訪問中に連絡できる相手と、その手段(GPSや緊急通報)はあるか
  • 10月からのカスハラ対策で、相談窓口はどこになるか
介護の転職サービスを比較する

出典

一次資料

報道

編集部メモ

  • 額と事業の中身は、すべて厚生労働省老健局の概算要求の資料から直接取り、編集部で計算し直して確かめています。老健局計上分は、要求額から前年度の当初予算を引くと差引の1,085億円になり、それを当初予算で割ると3.1%になることを確認しました。
  • 安全対策の13億円は、「地域の訪問介護等体制づくり支援事業」34億円の内数です。別の7.8億円の事業と足しても34億円を超えないことを確かめ、親子の関係を取り違えていないことを確認しています。
  • ⚠ 端数の合わない箇所があります。老健局の一般会計全体では、要求額から当初予算を引くと1,035億円になりますが、資料は+1,034億円と書いています。資料に「四捨五入によっているので、端数において合計と合致しないものがある」と注記があるため、本文ではこの全体の差引を使っていません。
  • ⚠ いずれも概算要求で、予算として決まった額ではありません。年末の予算編成で変わる可能性があります。本文でもそう書きました。
  • 補助の対象は、資料が「補助対象経費例」として挙げたものです。これ以外が対象にならないという意味ではなく、逆に挙がっているものがすべての自治体で使えるわけでもありません。
  • 事業を行うかどうかは自治体が決めます。どの地域で実施されるかは、この資料では分かりません。
  • 介護ニュースJointの報道は、この事業が報じられた時期を示すために参照しました。額と補助の対象はすべて原典から取っています。報道に触れられている個別の事件については、原典で確認していないため書いていません。
  • カスタマーハラスメント対策の事業主義務(10月1日施行)の中身は、別の記事で整理しています。本記事では補助の話に絞りました。
  • 年末の予算編成でこの2つの事業がどうなったかを、改めて取り上げる予定です。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

目次