30秒でわかるまとめ
- 医療・福祉の給料は7月に3.3%増えました月362,767円でした。働く人全体は4.7%増だったので、1.4ポイント届いていません。
- 差がいちばん大きいのは賞与にあたる部分です特別に支払われた給与は全産業134,819円に対し、医療・福祉は83,764円でした。
- 同じ事業所どうしで比べると順序が入れ替わります全産業の2.8%増に対し、医療・福祉は3.0%増でした。賃金の面では取り残されていません。
- 医療・福祉で増えたのはパートだけでしたパートは5.8%増、フルタイムは0.7%減です。パート比率の上げ幅は16の産業で最大でした。
厚生労働省は2026年9月8日、毎月勤労統計調査の2026年7月分結果速報を公表した。働く人全体の給料は前年同月比4.7%増、物価を差し引いた実質賃金も7か月続けてプラスである。ただしこの数字は、16の産業をならした平均でしかない。看護・介護・保育・栄養の職場が入る「医療,福祉」だけを取り出すと、見えるものが変わる。ここでは原典の統計表だけを読み、そこで働く人から見て何が起きているのかを整理する。
7月の給料は全体で4.7%増えた
働く人1人あたりの現金給与総額は436,401円で、前年同月比4.7%増だった。3%以上の伸びが6か月続くのは34年4か月ぶりだと、厚生労働省が報道発表に書いている。
物価を差し引いた実質賃金も2.4%増で、7か月続けてプラスになった。同じ月の消費者物価指数の伸びは2.2%である。
ここまでの数字はすべて16の産業をならした平均である。自分の業界がこの平均どおりに動いているとは限らない。
給料が上がったというニュースは、毎月のように見ています。
あれは全部の業界をならした平均だからね。
私の職場は、その平均より上なんでしょうか。下なんでしょうか。
医療・福祉は3.3%増にとどまる
「医療,福祉」の現金給与総額は362,767円、前年同月比3.3%増だった。全産業の4.7%増に1.4ポイント届いていない。
| 2026年7月 | 全産業 (円) | 医療,福祉 (円) |
|---|---|---|
| 現金給与総額 | 436,401 | 362,767 |
| きまって支給する給与 | 301,582 | 279,003 |
| うち所定内給与 | 280,797 | 264,899 |
| うち所定外給与 | 20,785 | 14,104 |
| 特別に支払われた給与 | 134,819 | 83,764 |
出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年7月分結果速報」第1表(事業所規模5人以上、就業形態計)。現金給与総額は、きまって支給する給与と特別に支払われた給与の合計である
16の産業のなかで、医療・福祉の現金給与総額は低いほうから5番目である。これより低いのは、飲食サービス業等・生活関連サービス等・その他のサービス業・教育,学習支援業の4つだけだった。
ただし、この額が低い理由の一部はパートの多さにある。フルタイムで働く人だけを取り出すと医療・福祉は472,242円(4.6%増)で、伸び率は全産業のフルタイム(4.7%増)とほぼ変わらない。パートだけを取り出しても149,323円(4.9%増)と、全産業のパート(4.7%増)を上回っている。
統計でいう「一般労働者」はパート以外の常用労働者を指す。フルタイムに近いが、正社員だけを意味するものではない。
差が大きいのは賞与にあたる部分
全産業と医療・福祉の差を項目ごとに見ると、差の大部分は特別に支払われた給与で生じている。この項目は賞与や期末手当を含む。
全産業は134,819円(6.3%増)、医療・福祉は83,764円(3.8%増)。引き算すると51,055円の開きになる。現金給与総額ぜんたいの差73,634円のうち、7割がここから来ている計算になる。
一方、毎月きまって支給される給与の差は22,579円にとどまる。毎月の給料より、賞与のほうで開いている。
7月の特別給与は夏の賞与の全額ではない。賞与は6月から8月に分かれて払われる。夏季賞与だけをまとめた集計は11月に公表される予定である。
同じ事業所で比べると3.0%増
この調査では、去年も今年も続けて調べた同じ事業所だけを取り出した数字も、参考として公表されている。調査対象の入れ替えによる段差の影響を受けない見方である。
| 現金給与総額の前年同月比 | 全産業 | 医療,福祉 |
|---|---|---|
| 公表ベース | 4.7% | 3.3% |
| 同じ事業所どうし | 2.8% | 3.0% |
出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」共通事業所による前年同月比の参考提供(2026年7月分速報)
同じ事業所どうしで比べると、順序が入れ替わる。全産業が2.8%増、医療・福祉が3.0%増である。公表ベースで見えた1.4ポイントの遅れは、そのまま「医療・福祉の職場が賃上げに出遅れている」ことを意味するわけではない。
フルタイムが減り、パートが増えた
賃金よりも大きく動いたのは、雇用のほうである。
| 医療,福祉で働く人 (2026年7月) | 人数 (千人) | 前年比 |
|---|---|---|
| 全体 | 8,565 | +1.4% |
| 一般労働者(フルタイム) | 5,652 | −0.7% |
| パートタイム労働者 | 2,913 | +5.8% |
出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年7月分結果速報」第3表(事業所規模5人以上)
働く人の数はぜんたいでは増えている。しかし増えたのはパートのほうだけで、フルタイムは前年より減っている。医療・福祉は、フルタイムの人数が前年より減った5つの産業のひとつだった。
1人あたりの働く時間も動いている。医療・福祉のパートの月間実労働時間は77.1時間で、前年より3.8%減だった。フルタイムのほうは160.5時間で0.1%減にとどまる。人数は増え、1人あたりの時間は短くなっている。
働く人の数は増えているのに、フルタイムだけ減っているんですね。
うん。増えた分はパートのほうに寄っているんだ。
人手が足りない話と、正職員の枠がある話は、別なんだよ。
求人が多いことと、正職員で入れることは違うんですね。
パート比率の上げ幅は16業種で最大
働く人に占めるパートの割合は、医療・福祉で34.01%になった。前年同月からの上げ幅は1.39ポイントである。
この1.39ポイントは、16の産業のなかで最も大きい。2番目は不動産・物品賃貸業の1.19ポイントだった。全産業の平均は31.28%で、上げ幅は0.04ポイントしかない。ほとんど動いていない全体のなかで、医療・福祉だけが大きく動いている。
一方で、辞める人の割合は下がっている。医療・福祉の離職率は1.29%で、前年同月より0.11ポイント低い。全産業の1.67%より低い水準である。入職率も1.45%で、0.10ポイント下がった。出入りそのものは、去年より静かになっている。
入職率と離職率はその月だけの数字である。1年間に何割が辞めたかを示すものではない。
編集部の見方:動いたのは賃金より雇い方
ここからは編集部の見方である。
「医療・福祉の賃上げが遅れている」という読み方は、この資料からは出てこない。同じ事業所どうしで比べれば全産業を上回っており、フルタイムもパートも伸び率は全産業と並んでいる。賃金の面では、医療・福祉は取り残されていない。
動いたのは雇い方のほうである。フルタイムが0.7%減り、パートが5.8%増え、パートの割合は16の産業で最も大きく上がった。パート1人あたりの働く時間も短くなっている。同じ仕事を、より短い時間の人で分けて回す形に寄っている。
求職者にとって効いてくるのは、この2つ目のほうである。求人の数が増えても、その中身がフルタイムとは限らない。「求人が多い業界」と「正職員として入りやすい業界」は、同じではない。求人票を見るときは、月給の額より先に雇用の形と週の勤務時間を確かめたほうが、実際の年収に近づける。
なお、この統計は「医療,福祉」というひとつのくくりで、看護・介護・保育・栄養に分けることはできない。ここで見えるのは業界ぜんたいの向きだけである。
自分の職場がどちらなのかは、この統計では分かりませんね。
うん。分かるのは業界ぜんたいの向きだけ。手元の求人票と並べると見えてくるよ。
迷ったらここ
求人票の月給より先に、雇用の形と週の勤務時間を見る
医療・福祉で増えたのはパートの5.8%だけで、フルタイムは0.7%減っています。求人の数が増えていても、その中身がフルタイムとは限りません。額を比べる前に、雇用の形をそろえてから比べてください。
- その求人は正職員か、契約か、パートか(週に何時間の勤務か)
- 賞与は何か月分と書かれているか(医療・福祉は毎月の給与より賞与で差がつきやすい)
- 月給に何時間分の手当が含まれているか
出典
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年7月分結果速報」2026年9月8日公表(2026年9月10日参照)
- 同 報道発表資料。現金給与総額436,401円(4.7%増)、実質賃金2.4%増、34年4か月ぶりの記載はここにある
- 同 統計表。第1表「月間現金給与額」、第2表「月間実労働時間及び出勤日数」、第3表「常用雇用及び労働異動率」。いずれも事業所規模5人以上、産業別・就業形態別
- 同 参考資料「毎月勤労統計における共通事業所による前年同月比の参考提供」。同じ事業所どうしで比べた前年同月比はここにある
- 同 概況の付表。実質賃金と消費者物価指数の前年同月比はここにある
編集部メモ
- 記事に載せた数値は、すべて厚生労働省の統計表から直接取り、編集部で計算し直して確かめています。給与では「きまって支給する給与と特別に支払われた給与を足すと現金給与総額になる」、雇用では「一般労働者とパートタイム労働者を足すと全体になる」という関係を、16の産業すべてで確認しました。さらに、一般とパートの給与額を人数で加重平均すると全体の給与額に一致することも確かめています。賃金の表と雇用の表をまたいで合うので、産業の行を取り違えていないことの裏づけになります。
- ⚠ 前年比は引き算や割り算では確かめられません。原本に「前年比などの増減率は、指数等により算出しており、実数で計算した場合と必ずしも一致しない」と注記があります。本記事に出てくる前年比は、すべて公表されたものをそのまま使いました。
- 「73,634円」「51,055円」「22,579円」は、公表されている数字どうしを引き算して出したものです。原本にそのままの記載はありません。「差の7割」も、この引き算どうしを割ったものです。
- ⚠ 7月の特別に支払われた給与は、夏の賞与の全額ではありません。賞与は6月から8月に分かれて支払われます。夏季賞与だけをまとめた集計は、9月分の速報とあわせて11月に公表される予定だと原本に書かれています。その時点で改めて取り上げる予定です。
- ⚠ 速報値です。原本に「速報値は、確報で改訂される場合がある」と書かれています。7月分の確報は9月28日に公表される予定です。
- ⚠ 2026年1月に調査対象の事業所を一部入れ替えています。その前後で現金給与総額に1,582円(0.5%)の段差が生じたと原本に注記があります。同じ事業所どうしで比べた数字を本文に併記したのは、この段差の影響を受けない見方を示すためです。
- ⚠ この統計は「医療,福祉」というひとつのくくりで、看護・介護・保育・栄養に分けられません。保育所はこのくくりに入りますが、幼稚園は「教育,学習支援業」に入ります。職種ごとの数字は、この資料からは出せません。
- パートで働く人の数の伸びは、医療・福祉より大きい産業が2つあります。ただしどちらも医療・福祉に比べてパートで働く人の数がずっと少なく、わずかな増減で率が大きく振れます。そのため本記事では人数の伸びの順位は書かず、比率の動きだけを書きました。
- 入職率と離職率は、その月だけの数字です。1年間にどれだけの人が辞めたかを示すものではありません。本文では前年同月と比べた向きだけを書いています。
- 事業所の規模5人以上の結果です。それより小さい事業所は含まれていません。
- 賃金の額と、実際の求人票に書かれる月給や賞与との関係は、この資料には載っていません。本記事では扱っていません。
- 報道各社の記事は参照していません。数値も記述も、すべて原典から取っています。

