調理師と調理員の違い|片方だけに、法律があります

目次

30秒でわかるまとめ

  • 調理師は、調理師法が定める都道府県知事の免許です名称を用いて調理の業務に従事することができる者、と条文は書いています。
  • 調理員という語は、調理師法に一度も出てきませんこの語が出てくるのは、施設に置く職員を定めた別の省令のほうに限られます。
  • 免許を得る道は、条文に2つ書かれています養成施設で1年以上学ぶか、2年以上の実務を経て試験に合格するか、の2つです。
  • 調理師でなければ、その名称は用いられません紛らわしい名称も禁じられていて、違反した場合の罰金の定めも置かれています。

※調理師の収入の統計は調理師の年収379.1万円、給食施設で働く栄養士の側は栄養士の仕事内容で扱っています。

厨房のコック(調理師調理員)

まず条文:調理師は「名称を用いて」の資格です

調理師法 第2条が、定義を1文で書いています。

「この法律で『調理師』とは、調理師の名称を用いて調理の業務に従事することができる者として都道府県知事の免許を受けた者をいう。」

出典:調理師法(e-Gov法令API 法令ID 333AC0100000147)第2条(原文どおり)

短い条文ですが、3つのことが入っています。

  • 名称を用いて調理の業務に従事することができる。
  • 免許を与えるのは都道府県知事。
  • 免許を受けた者を調理師という。

「調理の業務に従事することができる」のは、免許の有無にかかわらず誰でもです。条文が免許に結びつけているのは名称を用いての部分です。

第1条(目的)も、同じ方向を向いています。

「この法律は、調理師の資格等を定めて調理の業務に従事する者の資質を向上させることにより調理技術の合理的な発達を図り、もつて国民の食生活の向上に資することを目的とする。」

出典:調理師法 第1条(原文どおり)

給食室の煙突

ここが本題:調理師法に「調理員」はありません

調理師法の全文をe-Gov法令APIから取得して数えました。

語調理師法での出現回数
調理師多数(法律全体の主語)
調理員0回

出典:調理師法の全文をスクリプトで計数

調理員という職名を定義した条文は、調理師法にありません。資格も、免許も、名称の制限もありません。

では、どこに出てくるのか。施設に置く職員を定めた省令のほうです。本記事で取得した6本を数えました。

省令「調理員」の出現回数
家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準19回
児童福祉施設の設備及び運営に関する基準18回
特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準14回
児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準3回
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準2回
幼保連携型認定こども園の学級の編制、職員、設備及び運営に関する基準2回

出典:各省令をe-Gov法令APIから取得し、全文をスクリプトで計数。取得したのはこの6本で、ほかの法令については確認していない

そして出てくる形は、どれもほぼ同じです。「〇〇及び調理員を置かなければならない。ただし、調理業務の全部を委託する施設にあつては調理員を置かないことができる」という書き方が繰り返されます。

つまり——

  • 調理師=資格の名前。調理師法が免許と名称の制限を定めている。
  • 調理員=施設に置く職員の名前。省令が「置け」と書くだけで、資格の定義も要件も条文にありません。

並べられる言葉のように見えますが、条文の中での役割がそもそも違います。片方は資格の名前、もう片方は配置する職種の名前です。

食事する高齢者とスタッフ

国の賃金の統計では、給食調理人も調理師も「飲食物調理従事者」という1つの区分に入ります。給食調理員の時給の相場は給食調理員の時給の相場|統計の1時間当たりは1,221円で、給食だけの数字はありませんで扱っています。

免許を得る道は、条文に2つ書かれています

調理師法 第3条です。

号免許を受けられる者
1学校教育法 第57条(高等学校の入学資格)に規定する者で、都道府県知事の指定する調理師養成施設において、1年以上、調理、栄養及び衛生に関して調理師たるに必要な知識及び技能を修得したもの
2学校教育法 第57条に規定する者で、多数人に対して飲食物を調理して供与する施設又は営業で厚生労働省令の定めるものにおいて2年以上調理の業務に従事した後、調理師試験に合格したもの

出典:調理師法 第3条第1号・第2号

どちらの号も、入口に学校教育法 第57条(高等学校の入学資格)が置かれています。そして第2号の実務経験は「多数人に対して飲食物を調理して供与する施設又は営業」に限られ、その範囲は厚生労働省令に委ねられています。

省令に委ねられた施設・営業の範囲は、調理師法施行規則 第4条が給食施設と食品衛生法施行令の4つの営業を挙げ、喫茶店営業を除いています。パート・アルバイトの実務の数え方を含めて調理師免許の取り方|パートの実務は「週4日以上かつ1日6時間以上」が原則ですで扱っています。

試験を行うのは、都道府県知事です

第3条の2第1項です。

「調理師試験は、厚生労働大臣の定める基準により、調理、栄養及び衛生に関して必要な知識及び技能について、都道府県知事が行う。」

出典:調理師法 第3条の2第1項(原文どおり)

第2項では、一般社団法人又は一般財団法人であって厚生労働大臣があらかじめ指定する者を指定試験機関とし、試験事務の全部又は一部を行わせることができるとしています。

基準を定めるのは厚生労働大臣、試験を行うのは都道府県知事、という分け方です。試験科目そのものは、法律の条文には書かれていません。

免許は、名簿への登録によって行われます

第5条です。

項定められていること
第1項都道府県に調理師名簿を備え、免許に関する事項を登録する
第2項免許は、調理師名簿に登録することによつて行う
第3項都道府県知事は、免許を与えたときは調理師免許証を交付する

出典:調理師法 第5条

免許証の交付ではなく、名簿への登録が免許そのもの、という書き方です。

2年ごとに、就業地の知事へ届け出ます

第5条の2第1項です。働いている調理師に課されている義務です。

「多数人に対して飲食物を調理して供与する施設又は営業で厚生労働省令の定めるものにおいて調理の業務に従事する調理師は、厚生労働省令で定める2年ごとの年の12月31日現在における氏名、住所その他厚生労働省令で定める事項を、当該年の翌年1月15日までに、その就業地の都道府県知事に届け出なければならない。」

出典:調理師法 第5条の2第1項

基準日は12月31日、期限は翌年1月15日です。届出先は免許を受けた都道府県ではなく就業地の都道府県知事で、第2項により指定届出受理機関が受理の事務を行う場合もあります。

この義務は「調理の業務に従事する調理師」にかかっています。資格の名前の側にだけ、届出の仕組みが用意されています。

名称の使用制限と、罰則があります

第8条です。

「調理師でなければ、調理師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。」

出典:調理師法 第8条(原文どおり)

そして第11条が、第8条に違反した者は30万円以下の罰金に処すると定めています。

出典:調理師法 第11条

禁じられているのは名称の使用で、調理の業務そのものではありません。資格がなければ調理してはいけない、という条文は調理師法にありません。

設置は「努めなければならない」です

第8条の2(調理師の設置)です。

「多数人に対して飲食物を調理して供与する施設又は営業で厚生労働省令の定めるものの設置者又は営業者は、当該施設又は営業における調理の業務を行わせるため、当該施設又は営業の施設ごとに、調理師を置くように努めなければならない。」

出典:調理師法 第8条の2(原文どおり)

「置かなければならない」ではなく「置くように努めなければならない」です。努力義務として書かれています。

ここが、さきほどの省令との対比になります。省令の側は施設に調理員を「置かなければならない」と書き、調理師法の側は調理師を「置くように努めなければならない」と書いています。

免許の取消しには、食中毒が挙げられています

第6条(免許の取消し)は、都道府県知事が免許を取り消すことができる場合を2つ挙げています。

号取消しの事由
1第4条の2各号(麻薬、あへん、大麻又は覚せい剤の中毒者/罰金以上の刑に処せられた者)のいずれかに該当するに至つたとき
2その責めに帰すべき事由により、調理の業務に関し食中毒その他衛生上重大な事故を発生させたとき

出典:調理師法 第6条、第4条の2

第2号が、この資格の性格をよく表しています。調理技術の巧拙ではなく、衛生上の事故が免許に直接つながる書き方です。

この記事が扱っていないこと

  • 調理師試験の科目・日程・手数料。法律の条文にはなく、厚生労働省令や都道府県の公示の領域です。本記事は取得していません。
  • 「厚生労働省令の定めるもの」に当たる施設・営業の範囲。第3条第2号・第5条の2・第8条の2に繰り返し出てきますが、中身は省令にあり、本記事は取得していません。
  • 収入の統計。調理師の年収379.1万円で扱っています。
  • 調理技術に関する審査(第8条の3)の中身。厚生労働省令の領域です。

求人を見るときに確認できること

  • 募集の職名が「調理師」か「調理員」か。前者は資格の名前、後者は省令上の職名です。応募資格の欄と合わせて読むと、免許が要るのかどうかが分かります。
  • 免許が必須か、歓迎か。第8条の2は努力義務です。施設側に置く義務はありません。
  • 調理業務を委託しているか。省令の多くが「調理業務の全部を委託する施設にあつては調理員を置かないことができる」と書いています。委託先の求人かどうかで、雇い主が変わります。
  • 免許を持っているなら、届出をしているか。第5条の2により、2年ごとの12月31日現在の状況を翌年1月15日までに就業地の都道府県知事へ届け出ることになっています。

よくある質問

Q. 調理師の免許がないと、調理の仕事はできませんか。
A. 調理師法 第8条が禁じているのは「調理師又はこれに紛らわしい名称」を用いることです。調理の業務そのものを免許保有者に限る条文は、同法にありません。

Q. 調理員になるには資格が要りますか。
A. 調理師法に「調理員」という語は0回しか出てきません(全文を計数)。本記事が取得した6本の省令でも、置くべき職員として名前が出るだけで、資格要件は書かれていませんでした。

Q. 調理師免許はどうすれば取れますか。
A. 第3条が2つの道を定めています。都道府県知事の指定する調理師養成施設で1年以上修得するか、対象となる施設・営業で2年以上調理の業務に従事したうえで調理師試験に合格するかです。どちらも学校教育法 第57条に規定する者であることが前提です。

Q. 試験は国家試験ですか。
A. 第3条の2第1項は「厚生労働大臣の定める基準により(中略)都道府県知事が行う」と書いています。指定試験機関に試験事務を行わせることもできます。

Q. 施設は調理師を置かなければなりませんか。
A. 第8条の2は「調理師を置くように努めなければならない」と定めています。努力義務です。

Q. 栄養士とはどう違いますか。
A. 根拠となる法律が別(栄養士法)です。栄養士の業務の書かれ方は栄養士の仕事内容、管理栄養士との書き分けは管理栄養士と栄養士の違いで扱っています。

迷ったらここ

募集の職名が、どちらかを見る

調理師は資格の名前、調理員は省令上の職名です。応募資格の欄と合わせて読むと、免許が要るのかどうかが分かります。

  • 募集の職名が調理師か調理員か
  • 免許が必須か、歓迎か(施設側の設置は努力義務)
  • 調理業務を委託している施設か、直営か
栄養士の転職サービスを比較する

まとめ

調理師は、調理師法 第2条が定める都道府県知事の免許です。条文は「調理師の名称を用いて調理の業務に従事することができる者」と書いています。禁じられているのは名称の使用(第8条)で、違反には30万円以下の罰金(第11条)があります。

調理員は、調理師法に0回しか出てきません。本記事が取得した6本の省令では、施設に置くべき職員として名前が並ぶだけで、資格要件は書かれていませんでした。

免許を得る道は2つ(第3条)。養成施設で1年以上修得するか、2年以上の実務を経て都道府県知事が行う調理師試験(第3条の2)に合格するかです。免許は調理師名簿への登録によって行われます(第5条)。

働いている調理師には2年ごとの届出(第5条の2)があり、施設側には置くように努める義務(第8条の2)が置かれています。省令が調理員を「置かなければならない」と書くのとは、強さが違います。

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この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

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