保育の来年度要求は7兆7,436億円 0〜2歳だけ金額が空欄

保育室で乳児を保育する場面。こども家庭庁の令和9年度概算要求では0〜2歳の支援に金額が置かれていない
目次

30秒でわかるまとめ

  • 保育士に関わる予算は年末まで決まりませんこども家庭庁は令和9年度の概算要求で7兆7,436億円を求めました。要求であって決定ではありません。
  • 保育の人材確保には2,921億円が入っています「多様なニーズに対応した保育の充実、保育人材の確保」という項目で、拡充として要求されました。
  • 0〜2歳の支援は金額が入っていません「予算編成過程で検討」とされ、要求の段階では数字が置かれていない項目があります。
  • 保育所保育指針の改定がすでに動いています令和7年4月に諮問され、こども家庭審議会で審議中です。全国8か所で説明会を開く事業も要求されました。

こども家庭庁は2026年8月27日、令和9年度予算の概算要求を公表した。総額は7兆7,436億円である。報道では総額が大きく取り上げられているが、同じ資料には「金額を置いていない項目がある」ことも書かれている。ここでは原典だけを読み、保育士として働く人から見て何が起きているのかを整理する。

要求額は7兆7,436億円。まだ決定ではない

概算要求とは、各府省庁が翌年度の予算として「これだけ必要だ」と財務省に出す見積もりである。この段階では決まっていない。内訳は次のとおり。

区分令和9年度 概算要求額令和8年度 予算額対前年度比
一般会計44,896億円42,795億円+2,101億円
子ども・子育て支援特別会計32,540億円32,161億円+379億円
 うち 子ども・子育て支援勘定21,177億円21,118億円+59億円
 うち 育児休業等給付勘定11,362億円11,043億円+320億円
合計77,436億円74,956億円+2,480億円

出典:こども家庭庁「令和9年度予算概算要求のポイント」。特別会計は一般会計からの繰入れ等を除いた計数

要求は5つの柱で組まれている。「こどもまんなか社会」を実現する基盤の確保が3兆7,207億円、誰もが安心して妊娠・出産・子育てができる環境の整備が2兆7,167億円、困難な状況にあるこども・家庭への支援の充実が9,111億円、こどもの命と安全を守る支援の強化が1,166億円、若者が主体的に人生を選択できる環境の整備が42億円である。

資料はこの5つを「重点的な柱」と書いている。5つを足しても総額にはならない。網羅ではなく、力を入れる分野の提示である。

ちはる

7兆7,436億円と聞くと、もう決まった予算のように感じてしまいます。

熊先生

そこは分けて読みたいところだね。これは要求で、決まるのは年末の予算編成なんだ。

ちはる

では、この中で保育に関係するのはどのあたりでしょうか。

保育で最も大きいのは人材確保の2,921億円

資料には事業ごとの要求額が並んでいる。保育に関係するものを抜き出すと次のようになる。

項目要求額区分
多様なニーズに対応した保育の充実、保育人材の確保2,921億円拡充
企業等の活力も活かした放課後児童クラブ等の充実1,347億円当初化
保育DXの推進103億円拡充
障害児・医療的ケア児等への教育・保育の充実59億円拡充
こども性暴力防止法の円滑かつ確実な運用45億円—
地域の実情を踏まえた保育提供体制の確保13億円新規

出典:同資料

保育士の働き方に直接効きうるのは、2,921億円の「保育人材の確保」と、業務の負担を軽くする103億円の「保育DXの推進」である。あわせて、こども未来戦略により拡充された児童手当の確実な支給のために2兆663億円が要求されている。

減らす側も書かれている。こども家庭庁は、行政事業レビューなどを受けて合計約130億円の補助金等を見直し、概算要求に反映したとしている。内訳は、単発のイベント・広報啓発の委託費等の抜本的見直し、効果検証が十分にできていない地域少子化対策重点推進交付金の見直し、各種相談支援事業の統合・一元化、執行率が低い既存事業の縮減の4つである。

使い道の見せ方も変わる。こども家庭庁は、全ての予算事業の委託・補助先について、交付先の自治体からの最終支出先まで含めてネット上で公開する「全部見える化」を令和9年度に実現するとしている。事業名と支出金額をあわせて出す形が資料に示されている。園の運営費が公費でまかなわれている以上、どこにいくら流れたかが外から見えるようになる。

あわせて、交付申請と実績報告の電子化・統一化も図るとされている。自治体側の事務を軽くする狙いだが、園から自治体へ出す書類の様式にも波及しうる。

ちはる

保育人材の確保に2,921億円。金額が大きいので安心してよいのでしょうか。

熊先生

そこは慎重に見よう。この項目は保育の充実もまとめて含んでいる大きな枠なんだ。

ちはる

……ということは、いくらが給与に回るかは、まだ分からないのですね。

熊先生

うん。しかもこの資料には、金額が置かれていない項目もあるんだ。

0〜2歳の支援には、まだ金額が入っていない

資料の1ページ目に、総額の表のすぐ下、独立した枠で次の一文が置かれている。

予算編成過程で検討事項

0~2歳を含む幼児教育・保育の支援や令和9年度障害福祉報酬改定等については、予算編成過程で検討。

こども家庭庁「令和9年度予算概算要求のポイント」1ページ

0〜2歳の幼児教育・保育の支援は、要求の段階では金額が置かれていない。年末の予算編成の中で検討される、と書かれている。

0〜2歳児の受け入れは、保育士の配置基準がもっとも手厚く定められている年齢層である。ここに何が入るかは、現場の人員体制に直接つながりうる。それがまだ空欄だということが、この資料から読み取れることである。

総額の7兆7,436億円だけを見ると全部が固まったように見える。実際には、金額が置かれていない項目がある。

保育所保育指針の改定が、すでに動いている

要求項目の中に、保育士の仕事の中身に直接かかわる新規事業がある。「新しい保育所保育指針等の円滑な実施に向けた環境の整備」である。資料は事業の背景をこう説明している。

現在、こども家庭審議会において、令和7年4月の「保育所、認定こども園における保育の内容の基準等の在り方について(諮問)」を踏まえ、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領の改定に向けた審議が行われているところ。

こども家庭庁「令和9年度予算概算要求の概要(主な新規・拡充事業)」

保育所保育指針は、保育の内容の基準を定めた告示である。その改定に向けた審議が、すでに始まっている。事業の中身は、全国8か所での説明会(オンライン配信の併用)、告示と解説冊子の作成、実践事例データベースやオンライン研修を含むコンテンツサイトの構築とされている。

改定の中身はまだ審議中で、この資料には書かれていない。分かるのは、周知のための予算がすでに要求されている段階にあるということである。

編集部の見方:総額では何も決まらない

ここからは編集部の見方である。ここまでは資料に書かれている事実で、以下は解釈にあたる。

この資料は「7兆7,436億円」という総額で報じられる。だが働く側から見ると、その数字からは何も決まらない。

第一に、概算要求は要求であって決定ではない。決まるのは年末の予算編成である。

第二に、2,921億円は「多様なニーズに対応した保育の充実、保育人材の確保」というひとまとまりの項目である。この中のいくらが処遇に向かうのかは、この資料からは分からない。

第三に、0〜2歳の支援は空欄のままである。配置基準がもっとも手厚い年齢層の話が、要求の段階では数字になっていない。

そのうえで、この資料から言えないことも書いておく。要求額と、実際の保育士の給与や配置がどう変わるかの関係は、この資料には載っていない。「予算が増えた=給料が上がる」とは言えない。ここは資料の範囲を超える。

言えるのは、見ておく日付が1つ決まったということである。年末の予算編成で、空欄だった項目に数字が入る。そこが実際の変化の分かれ目になる。

ちはる

総額のニュースを見て、もう決まったことだと思っていました。

熊先生

要求と決定は別ものだからね。年末にもう一度、同じ項目を見てみるといいよ。

迷ったらここ

園を選ぶときは、国の予算ではなく園の体制を見る

概算要求は7兆7,436億円ですが、0〜2歳の支援は金額が置かれていません。国の予算がどう決まるかは年末までわかりません。いま確かめられるのは、園がすでにどうなっているかです。

  • 0〜2歳児クラスに保育士が何人配置されているか
  • 記録や連絡帳の作業にICTを使っているか(保育DXの中身にあたる)
  • 処遇改善等加算をどの区分まで取っているか
保育士の転職サービスを比較する

出典

  • こども家庭庁「予算・決算・税制・特別会計に関する情報開示」2026年8月27日公表(2026年9月7日参照)
  • 同 資料1「令和9年度予算概算要求のポイント」(PDF)。総額と内訳、5つの重点的な柱、事業別の要求額、補助金等の見直し
  • 同 資料2「令和9年度予算概算要求の概要(主な新規・拡充事業)」(PDF)。新しい保育所保育指針等の円滑な実施に向けた環境の整備事業

編集部メモ

  • 記事に載せた数値は、すべてこども家庭庁の公表資料から直接取り、編集部で計算し直して確かめています。一般会計と特別会計を足すと合計と一致すること、前年度との差が公表されている数字と合うことを確認しました。
  • ⚠ 端数が合わない項目があります。子ども・子育て支援勘定の21,177億円と育児休業等給付勘定の11,362億円を足すと32,539億円になり、公表されている特別会計の32,540億円と1億円ずれます。原本に「計数は、それぞれ四捨五入によっているので、端数において合計と合致しないものがある」と断りがあるため、本文では公表されている数字をそのまま使い、引き算で作った数字は載せていません。
  • ⚠ 保育所保育指針に関する事業の金額は、あえて書きませんでした。同じ日に公表された2つの資料で、金額が3億円と0.9億円に食い違っているためです。事業の名称も「環境の整備」と「環境の整備事業」で異なります。どちらが正しいのかを公表資料から判断できなかったので、金額を使わずに書ける事実だけを載せました。
  • 5つの柱を足しても総額にはなりません。5つの合計は74,693億円で、総額の77,436億円には届きません。原本が「重点的な柱」と書いており、すべてを網羅したものではないため、本文でも足していません。
  • 補助金の見直しは「約130億円」と書きました。示されている4項目を足すと126.9億円になりますが、原本の表記が「合計 約130億円」であるため、そちらに合わせています。
  • 2,921億円の内訳は、この資料では分かりません。「多様なニーズに対応した保育の充実、保育人材の確保」というひとまとまりの項目で、そのうちいくらが処遇改善に向かうのかは書かれていません。
  • 要求額と、実際の保育士の給与や配置がどう変わるかとの関係は、この資料には載っていません。本記事では扱っていません。
  • 報道各社の記事は参照していません。数値も記述も、すべて原典から取っています。
  • 年末の予算編成で、「0〜2歳を含む幼児教育・保育の支援」に金額が入ります。そこで何が決まったかを、改めて取り上げる予定です。
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この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

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