横浜市の給食献立、約90の条件を自動確認へ 栄養士の時間を食育に

横浜市の給食献立 約90の条件を自動確認へ
目次

30秒でわかるまとめ

  • 横浜市が栄養士の献立づくりをシステムで補助します市立中学校の給食の献立を、市の栄養士が年間約200日分つくっています。その作業を減らすためのシステムです。
  • 献立は1日1種類から3種類に増えました全員給食で約8万食になり、2026年度から市内を3つに分けました。アレルギー代替食を含めると1日5種類です。
  • 約90の条件をまとめて自動で確認できました実証では、条件を満たす献立案を約30分でつくれました。作業時間が何割減ったかの数字は出ていません。
  • 事業者の提案は10月1日に締め切られます今年度の費用の上限は約1,000万円です。市は空いた時間を、食育やアレルギー対応などに充てたいとしています。

横浜市教育委員会は、市立中学校の給食の献立づくりを補助するシステムの導入を進めている。9月25日に開発事業者の公募への質問回答を公表し、10月1日に提案の受け付けを締め切る。教育家庭新聞は9月28日、横浜市が栄養士の作業の効率化に向けて、中学校の給食献立作成補助システムを開発すると報じた。今年度からの全員給食で献立が1日1種類から3種類に増え、栄養士の作業が増えたことが背景にある。一つの自治体の取り組みだが、学校給食で働く栄養士の仕事がどう変わりうるかを示す例として整理する。

中学校給食は143校・約8万人分

横浜市は2026年度から市立中学校で全員給食を始め、市内143校の生徒と教職員約8万人に給食を出している。主食、主菜1品と副菜2品、汁物、牛乳がそろう完全給食で、主食と副食は専用のランチボックスに盛り付ける。調理と配送は民間の事業者に委託するデリバリー方式で、食材は公益財団法人よこはま学校食育財団がまとめて調達している。

献立は、文部科学省の「学校給食摂取基準」をもとに、市の職員の栄養士が年間約200日分をつくる。市は給食の献立を、栄養のバランスだけでなく、旬の食材を生かしたり横浜の食文化を伝えたりする「生きた教材」と位置づけている。

ちはる

献立は、学校ごとに栄養士さんが考えていると思っていました。

熊先生

横浜市の中学校は、市の栄養士がまとめてつくっているんだ。

ちはる

それだけの人数分を、同じ人たちで考えるんですね。

献立は1日1種類から3種類に

2025年度までは、1日の献立は市内全域で1種類だった。全員給食で約8万食になったため、市は日々の食材を安定して調達できるよう、2026年度から市内を3つのブロックに分け、1日に3種類の献立を出している。アレルギー代替食を含めると5種類になる。アレルギー代替食は、特定原材料9品目をすべて代替または除去した献立である。

3種類の献立は、1種類目(A献立)を組み替えて2種類目(B献立)と3種類目(C献立)をつくる。ある日を見ると市内で3種類の献立が出ているが、1か月で見ると、どのブロックも同じものを食べる仕組みである。

市によると、この複数献立化によって、栄養価や価格、食材を調達できる曜日の制限といった条件を、3種類すべてで満たす必要が生じた。献立づくりが複雑になり、栄養士が献立作成にかける作業時間や工数が増えたという。条件の中には、栄養士の経験則や暗黙知によるもので、言葉や数字になっていないものも含まれるとしている。

約90の条件をまとめて自動で確認

市は2025年12月23日から2026年6月30日まで、株式会社ウッドペッカーと協定を結び、献立作成補助システムの実証を行った。行政の課題と民間企業のデジタル技術を結びつける市の仕組み「YOKOHAMA Hack!」を通じた取り組みである。実証で組んだシステムは、1か月分の献立づくりを次の流れで補助する。

手順システムがすること
基本情報の登録栄養価や価格などの条件、給食を出す日を設定する
テーマ献立の登録栄養士が考えたその月のテーマ献立を登録する
献立の自動生成テーマ献立以外の日の献立を自動でつくる
献立チェック約90の条件を一括で判定し、栄養士が手直しして1種類目が完成する
派生献立の生成1種類目を組み替えて、2種類目と3種類目を自動でつくる

出典:横浜市 記者発表資料(2026年8月10日)をもとに編集部作成

市が8月10日に公表した結果では、栄養価や価格などの条件を高い精度で満たす献立案を、約30分の計算時間で自動作成できた。計算時間を15分から24時間まで変えても品質にほぼ差はなく、レシピの数を今の3倍に増やしても品質に影響はなかった。約90の条件を一括で判定するチェック機能には、栄養士から「今すぐ使ってみたい」という声が出たという。

市は、システムが完璧な献立をつくるのではなく、栄養士の手で献立を完成させる土台をつくる役割だと説明している。

課題も挙がった。経験則や暗黙知を丁寧に言葉にして、データや条件を細かく整える必要があること。既存のシステムとの連動を含めて、実際の業務の流れにどう組み込むかを検討する必要があること。長期休業を含む月のように、自動でつくる日数が少ない月の扱いにも注意がいるとした。

ちはる

献立づくりを、機械に任せるということですか。

熊先生

任せるのは土台までだね。仕上げるのは栄養士なんだ。

熊先生

条件の確認を、まとめてできるところが大きいみたいだよ。

ちはる

確認の手間が減れば、ほかの仕事に時間を回せますね。

作業時間の減り方は数字で出ていない

市は、今のやり方で1か月分の献立をつくる場合と比べて、全体の作業時間を「大幅に削減できる」としている。ただし、何時間、何割減ったかという数字は記者発表資料に書かれていない。

市がはっきり書いているのは、空いた時間の使い道である。新しい献立の開発、生徒の意見を踏まえた献立の改善、食育の推進、アレルギー対応などの学校支援といった、栄養士の専門性を生かす「対人・現場支援業務」に充てたいとしている。業務説明資料でも、空いた時間を献立開発や献立改善、食育推進、衛生管理などに使い、栄養士に一層専門性を発揮してもらいたいと書いている。

10月1日に事業者の提案を締め切る

市は実証の結果を受けて、8月27日にシステムの開発と運用・保守を委託する事業者の公募(公募型プロポーザル)を始めた。参加できるのは市内の中小企業である。

日付できごと
2025年12月23日実証を開始
2026年6月30日実証を終了
2026年8月10日実証の結果を公表
2026年8月27日開発事業者の公募を開始
2026年9月25日事業者からの質問への回答を公表
2026年10月1日提案書の締め切り
2026年10月上旬提案者へのヒアリング(予定)

出典:横浜市 記者発表資料、公募型プロポーザルの発注ページ。選ばれた事業者は、発注ページに「今後掲載予定」とある

今年度の費用の上限は約1,000万円(税込)で、2027年度以降の費用は含まない。契約期間は2027年3月31日までで、市は今年度中に開発やテスト、操作研修を終えて本稼働させることを想定している。1か月分のベース案を最大1時間程度で出せることも条件にしている。

システムを使うのは、学校給食・食育推進課の栄養士6人程度の想定である。市は、献立作成に慣れていない異動者や、システムの操作に慣れていない職員でも使いやすいことを求めている。

補助の栄養士を時給1,788円で募集

市は4月、献立作成業務を補助する栄養士を、会計年度任用職員として1人募集していた。採用は6月1日で、雇用期間は2027年3月31日まで。勤務は土日を除く週5日の午前9時から午後4時(休憩1時間)で、報酬は時給1,788円(予定)だった。期末手当と通勤費は別に出る。応募には栄養士の資格が必要で、栄養教諭や学校栄養職員として働いた経験があることが望ましいとしていた。年齢の上限はない。この募集はすでに締め切られている。

1日の実働は6時間なので、時給どおりに計算すると1日あたり10,728円になる(編集部計算。期末手当と通勤費は含まない)。仕事の内容は、学校給食に関する事務の補助などである。

ちはる

献立の仕事を補助する栄養士の募集もあったんですね。

熊先生

学校給食の仕事は、自治体の採用ページにも出ているよ。

迷ったらここ

献立を誰がつくるかを聞く

学校給食や給食の委託会社の仕事は、献立を誰が、どの単位でつくるかで毎日の仕事の中身が変わります。使っている道具も職場ごとに違います。応募する前に、次の点を聞いておくと比べやすくなります。

  • 献立は施設ごとにつくるか、本部や自治体でまとめてつくるか
  • 1日に何種類の献立があるか(アレルギー対応食を含む)
  • 献立作成や栄養計算に使っているシステム
  • 食育や現場に出る仕事がどれくらいあるか
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編集部の見方:空いた時間が現場に向かうか

ここからは編集部の見方である。横浜市の例は一つの自治体の中学校給食の話で、全国の学校給食が同じ仕組みになるわけではない。それでも、条件の確認のような作業をシステムに任せ、栄養士の時間を食育やアレルギー対応、生徒の声を聞く仕事に回すという考え方ははっきりしている。

給食の栄養士の仕事は、献立を組むことと、それを現場で生かすことの両方からなる。前者の手間が減れば、後者に使える時間が増える。ただし市は、作業時間がどれだけ減ったかを数字で示していない。経験則や暗黙知を条件として言葉にする作業が要るとも書いている。導入してしばらくは、条件を整える手間が栄養士の側にかかることも考えられる。

学校給食や給食の委託会社で働く栄養士が職場を選ぶときは、献立を誰がどの単位でつくっているか、どんな道具を使っているかを聞いておくと、入ってからの仕事の中身を想像しやすい。献立づくりが中心の職場なのか、現場に出る時間が長い職場なのかは、求人票の「献立作成」の4文字だけでは分からない。

管理栄養士の国家試験の日程と合格率は管理栄養士試験の記事で整理している。

出典

一次資料

報道

編集部メモ

  • 横浜市の中学校給食の取り組みで、全国一律の話ではありません。小学校の給食や、ほかの自治体の献立の仕組みは別です。
  • 数字と条件はすべて横浜市の公表資料から取りました。記者発表資料と業務説明資料で、給食の数や献立の種類が食い違っていないことも確かめています。
  • 作業時間がどれだけ減ったかは、市の資料に数字がありません。本文では「大幅に削減できる」という市の説明をそのまま書きました。
  • 「栄養士6人程度」は、システムを使う職員の想定人数です。横浜市の栄養士の総数ではありません。
  • 業務説明資料には、書かれている内容に「現在検討中のもの」も含まれるとあります。システムの中身は、選ばれる事業者の提案によって変わりえます。
  • 補助の栄養士の募集は2026年6月1日採用のもので、締め切られています。1日あたりの額は、時給に実働6時間をかけて編集部が計算しました。
  • 教育家庭新聞の報道は、この話題が報じられた時期を示すために参照しました。数字と記述はすべて横浜市の資料から取っています。
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この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

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