30秒でわかるまとめ
- 看護師の夜勤手当は20年で1,000円前後の上昇です三交代の準夜勤と深夜勤の話です。二交代の夜勤は約2,200円の上昇でした。
- 夜勤が多い人への上乗せが7割の病院にありません月の夜勤回数が一定を超えたときの増額や加算の制度が「ない」と答えた病院が69.6%でした。
- 給与が低い病院ほど離職率が高い傾向でした協会が賃金額ごとに離職率を出しています。回答した3,074病院の全体では11.0%でした。
- 日本看護協会が賃上げの実態を調べています賃上げの現状を把握するためで、9月1日から14日までです。看護職員と病院・訪問看護の管理者が対象です。
日本看護協会が2026年9月1日から14日まで、「看護職員の賃上げに関する緊急調査」を実施している。令和8年度の診療報酬改定でベースアップ評価料が増額され、その収入を夜勤手当の増額に充てることもできるようになった直後のことである。賃上げが進んでいるはずのこの時期に、なぜ緊急の調査なのか。協会自身が公表している賃金の調査結果を読むと、その背景が見えてくる。
夜勤手当は20年で1,000円前後
日本看護協会の「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」によると、夜勤手当の平均額はこうなっている。
| 夜勤手当(1回あたり) | 平均額 |
|---|---|
| 三交代制の準夜勤 | 4,567円 |
| 三交代制の深夜勤 | 5,715円 |
| 二交代制の夜勤 | 11,815円 |
出典:公益社団法人日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査 報告書」
問題はその推移である。報告書は「2003年からの約20年間で、三交代制準夜勤・深夜勤では1,000円前後の上昇、二交代制夜勤では約2,200円上昇した」と書いている。
20年で1,000円である。同じ期間に物価も他の産業の賃金も動いているが、夜勤1回に対して支払われる額は、ほとんど同じ場所にとどまっている。
この調査は病院3,471件からの回答で、回収率は43.0%である。全国8,079病院の看護部長に聞いている。
夜勤の手当は、もっと上がってきているものだと思っていました。
協会が自分で調べて、そう書いているんだ。
夜勤の回数が多い人は、そのぶん増えたりしないんでしょうか。
回数が多くても上乗せはない
月の夜勤回数が一定を超えたときに手当を増やす制度があるかを聞いた項目がある。もっとも多い答えは「ない」で69.6%だった。
| 夜勤回数が多い職員への制度 | 割合 |
|---|---|
| ない | 69.6% |
| 夜勤手当への加算がある | 9.2% |
| 夜勤手当の増額がある | 8.0% |
出典:同上。複数回答のため、合計は100%にならない
つまり7割近い病院では、月に何回入っても1回あたりの額は変わらない。夜勤の回数が増えれば収入は増えるが、それは単価が上がったからではなく、回数を重ねたからである。
夜勤専従についても聞いている。夜勤専従者が「いる」と答えた病院は41.7%で、そのうち専従者に特別な手当が「ある」病院は14.2%だった。手当がある病院での平均額は2万5,000円である。
⚠ この14.2%は「夜勤専従者がいる病院」を分母にした割合である。回答した病院全体のなかでの割合ではない。
基本給は25万2,450円だった
同じ調査から、給与の水準も見ておく。勤続10年・31〜32歳・非管理職の看護師の場合である。
- 基本給月額の平均 25万2,450円
- 税込給与総額の平均 33万9,979円
出典:同上
2つの差は8万7,529円である。この差は引き算で出したもので、報告書にそのままの記載はない。夜勤手当を含む各種の手当が、月の手取りのかなりの部分を作っていることになる。
ベースアップ評価料を「算定している」と答えた病院は73.2%だった。制度としては広く使われている。
給与が低い病院ほど離職率が高い
この報告書には、給与の額と離職率を突き合わせた項目がある。勤続10年・31〜32歳・非管理職の看護師の賃金額ごとに、その病院の離職率を出したものである。
結果は「基本給月額・税込給与総額ともに、給与が低い病院ほど離職率が高くなる傾向がみられた」だった。回答した3,074病院の正規雇用看護職員の離職率は、全体で11.0%である。
給与が低いから辞めるのか、辞める人が多いから給与を上げられないのかは、この調査からは決まらない。ただ2つが同じ向きに動いていることは、協会自身のデータに出ている。
6割の病院は次は上げる予定がない
新卒の初任給も見ておく。学歴によって次のように違う。
| 新卒看護師の初任給 | 基本給 | 税込総額 |
|---|---|---|
| 看護3年課程卒 | 212,077円 | 274,840円 |
| 看護系大学卒 | 217,934円 | 282,453円 |
| 看護系大学院卒 | 222,736円 | 287,936円 |
出典:同上。いずれも平均額
3年課程卒と大学院卒の基本給の差は1万659円である。この差は引き算で出したもので、報告書にそのままの記載はない。
動きがあるのはここからである。2022年以降の初任給の改定状況は「初任給を上げた」が44.9%で最も多く、「変えていない」が40.9%だった。ところが2025年度の新卒採用者について聞くと、「変える予定はない」が60.8%で最も多く、「引き上げ予定」は24.3%にとどまっている。
この数年で初任給を上げた病院は4割強ある。ただし次も上げると答えた病院は4分の1ほどである。
協会が9月14日まで緊急調査
そして冒頭の話に戻る。日本看護協会は2026年9月1日から14日まで、「看護職員の賃上げに関する緊急調査」を行っている。対象は看護職員、病院の看護管理者、訪問看護事業所の管理者である。
協会は目的を、賃上げの現状を把握し、今後さらなる処遇改善に必要な財源の確保や支援策の拡充につなげることとしている。令和8年度の改定でベースアップ評価料が増額され、その収入を夜勤手当の増額に充てることも可能になった、という説明も並べている。
この調査の結果はまだ出ていない。本記事に載せた数字は、すべてそれ以前に公表された調査のものである。
賃上げが進んでいるなら、緊急で調べる必要はなさそうですが。
財源の確保につなげる、と書いてあるね。足りていないという立場だ。
結果が出たら、そこで初めて分かることも多いよ。
それまでは、自分の職場の数字を見るしかないんですね。
編集部の見方:単価か回数かで違う
ここからは編集部の見方である。
看護師の求人で「夜勤手当あり」と書かれていても、それだけでは何も分からない。この調査が示しているのは、1回あたりの単価が20年ほとんど動いていないことと、回数を重ねても単価は上がらない病院が7割近いことである。
つまり夜勤で収入を増やす形は、いまのところ回数を増やすことでしか成り立っていない。単価が上がる仕組みを持っている病院は少数派である。
だから比べるときは、月給の総額ではなく「1回いくらか」と「月に何回入る前提か」の2つに割って見たほうがよい。総額が同じでも、6回で届く額と10回でやっと届く額はまったく違う。
初任給の動きも、同じ見方で読める。この数年で上げた病院は44.9%あったが、次の年度も上げると答えたのは24.3%だった。上げた病院が多いことと、これからも上がることは別である。入る年によって条件が変わりうる、と考えたほうがよい。
給与と離職率が同じ向きに動いているという結果も、求人を見るときの手がかりになる。離職率は多くの病院が数字を持っている。賃金の話が聞きにくければ、そちらから聞く手もある。
ベースアップ評価料を算定している病院が73.2%ある一方で、協会が緊急調査に踏み切っている。制度が使われていることと、それが本人に届いていることは別の話である。調査の結果が出れば、そこがはっきりする。
面接では、月給より先に夜勤の条件を聞いたほうがいいんですね。
1回いくらかと、何回入る前提か。その2つで月給の中身が見えるよ。
迷ったらここ
月給ではなく「1回いくら」と「月に何回」で比べる
夜勤手当の単価は20年で1,000円前後しか上がっておらず、回数が増えても単価が上がる制度は3割ほどの病院にしかありません。総額が同じでも、何回の夜勤で届く額かで働き方が変わります。
- 夜勤1回あたりの手当はいくらか(二交代か三交代かも一緒に)
- 求人票の月給は、月に何回の夜勤を前提にした額か
- 夜勤の回数が増えたときに単価が上がる仕組みはあるか
出典
一次資料
- 公益社団法人日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査 報告書」(PDF)2026年9月11日参照。調査期間は2025年1月14日から2月25日。病院3,471件・訪問看護事業所1,377件・看護職員個人5,575件の回答
- 同「看護職員の処遇改善に向けて」2026年9月11日参照。「看護職員の賃上げに関する緊急調査」の実施期間と目的、ベースアップ評価料の説明はここにある
編集部メモ
- 数値はすべて日本看護協会の報告書から直接取り、編集部で計算し直して確かめています。回収率は3つとも割り戻して公表値と一致することを確認しました。夜勤手当については、報告書のグラフに出ている2003年の額と2024年の額の差を計算し、報告書の本文にある「1,000円前後」「約2,200円」という記述と合うことを確かめています。
- ⚠ この報告書のグラフは、そのまま読むと行が1つずれます。本文の記述と突き合わせて初めて、どの線がどの勤務形態のものかが決まりました。上の差の計算は、その確認のために行ったものです。
- ⚠ 「7割近い病院で上乗せがない」の項目は複数回答です。69.6%・9.2%・8.0%を足しても100%にはなりません。本文でも足していません。
- ⚠ 夜勤専従の手当14.2%は、「夜勤専従者がいる病院」が分母です。回答した病院全体ではありません。本文にも分母を書きました。
- 「8万7,529円」と「1万659円」は引き算で出した数字です。前者は税込給与総額33万9,979円から基本給25万2,450円を引いたもの、後者は大学院卒と3年課程卒の基本給の差で、報告書にそのままの記載はありません。
- ⚠ 給与額の階級ごとの離職率は、本記事では使っていません。報告書では表になっていますが、階級ごとの病院数を足しても全体の3,074病院に合わず、行の対応を確実に読み取れませんでした。本文に載せたのは、報告書の地の文にある「給与が低い病院ほど離職率が高くなる傾向」という記述と、全体の11.0%だけです。
- 給与が低いことと離職率が高いことの前後関係は、この調査からは分かりません。報告書も「傾向がみられた」と書くにとどめています。本文でも原因としては書いていません。
- ⚠ 緊急調査の結果はまだ出ていません。本記事に載せた数字は、すべてそれ以前に公表された調査のものです。調査は2026年9月14日までで、結果の公表時期は示されていません。
- この調査は日本看護協会が会員などに聞いたもので、国の統計ではありません。病院の回収率は43.0%、看護職員個人は37.2%です。答えた人に偏りがある可能性は残ります。
- 夜勤手当が定額ではない病院については、この数字に含まれ方が異なります。報告書は定額で支給している病院の平均額として示しています。
- 夜勤の回数そのものや、72時間ルールの状況はこの報告書では扱われていません。本記事でも触れていません。
- 報道各社の記事は参照していません。数値も記述も、すべて日本看護協会が公表した資料から取っています。
- 緊急調査の結果が公表されたら、改めて取り上げる予定です。

