30秒でわかるまとめ
- 医療・福祉では62.0%が転職者の賃金に資格を考慮しました看護師や介護職、保育士、栄養士が働く業界の事業所の割合です。全産業の30.6%の約2倍で、16の産業で最も高い値です。
- 前職の賃金を考慮する事業所は19.8%でした全産業の27.0%より低い値です。医療・福祉で最も多かったのは「これまでの経験・能力・知識」の66.9%でした。
- 転職者がいる事業所は48.8%に増えました5年前の前回調査の38.3%から10.5ポイント上がりました。16の産業のなかで3番目に高い割合です。
- 転職者を採る予定の事業所は68.4%です今後3年間の予定で、前回の55.2%から13.2ポイント上がりました。転職者に教育訓練をした事業所も84.4%ありました。
厚生労働省は9月25日、2025年(令和7年)の「転職者実態調査」の結果を公表した。転職者を受け入れた事業所と、転職した本人の両方に聞く調査で、前回の2020年から5年ぶりになる。看護師や介護職、保育士、栄養士が働く「医療,福祉」の事業所では、転職者の賃金を決めるときに「免許・資格」を考慮した割合が62.0%で、16の産業のなかで最も高かった。転職先で給料がどう決まるのかを知りたい人に向けて、医療・福祉の数字を中心に整理する。
医療・福祉の48.8%に転職者がいる
調査は、5人以上の常用労働者を雇う事業所約17,000と、そこで働く転職者約13,000人を対象に、2025年10月1日時点の状況を聞いた。有効回答率は事業所調査が52.7%、個人調査が52.3%だった。ここでいう「転職者」は、フルタイムで働く人のうち、雇われる前の1年間に別の会社で働いた経験があり、2024年10月1日から2025年9月30日までに雇われた人を指す。
フルタイムの労働者がいる事業所のうち、転職者がいる事業所は全産業で38.2%だった。「医療,福祉」は48.8%で、「不動産業,物品賃貸業」の53.9%、「情報通信業」の49.0%に次いで3番目に高い。前回2020年の調査では38.3%で、10.5ポイント上がった。医療・福祉は、調査対象の事業所全体の16.0%を占める。
在籍するフルタイム労働者に占める転職者の割合も、医療・福祉は8.8%で、全産業の6.4%を上回った。医療・福祉の転職者のうち、雇用期間の定めがない人は74.1%、1年以上の期間を定めて雇われた人は25.9%だった。前回は定めのない人が84.3%、期間を定めた人が15.7%で、期間を定めて雇われる転職者の割合が10.2ポイント増えた。
医療・福祉は、転職する人が多い業界なんですね。
半分近くの事業所に、この1年で転職してきた人がいるんだ。
それなら、転職した人の給料の決まり方も知りたいです。
賃金に資格を見る事業所は62.0%
調査では、転職者がいる事業所に、転職者の賃金を決めるときに考慮した要素を複数回答で聞いている。医療・福祉では「これまでの経験・能力・知識」が66.9%で最も多く、「免許・資格」が62.0%で続いた。
| 考慮した要素 | 医療,福祉 | 全産業 |
|---|---|---|
| これまでの経験・能力・知識 | 66.9% | 59.2% |
| 免許・資格 | 62.0% | 30.6% |
| 賃金の世間相場 | 32.9% | 34.2% |
| 年齢 | 26.3% | 35.3% |
| 前職の賃金 | 19.8% | 27.0% |
| 学歴 | 16.9% | 12.0% |
| その他 | 16.0% | 17.9% |
出典:厚生労働省「令和7年転職者実態調査」表5。転職者がいる事業所を100とした割合(複数回答)
「免許・資格」の62.0%は、全産業の30.6%の約2倍で、16の産業のなかで最も高い。2番目は「鉱業,採石業,砂利採取業」の53.9%、3番目は「建設業」の41.1%だった。医療・福祉は、看護師や保育士、管理栄養士、介護福祉士など、資格を持つ人が多く働く業界である。
「考慮した」は複数回答の割合である。62.0%の事業所が、資格だけで賃金を決めたという意味ではない。
考慮した要素のうち、どれを最も重視したかも聞いているが、産業別の数字は公表されていない。全産業では「これまでの経験・能力・知識」が38.4%で最も多く、「賃金の世間相場」が19.1%、「前職の賃金」が9.2%、「免許・資格」が8.1%だった。
前職の賃金を見るのは19.8%
医療・福祉で「前職の賃金」を考慮した事業所は19.8%で、全産業の27.0%より7.2ポイント低い。「年齢」も26.3%で、全産業の35.3%を下回った。一方で「学歴」は16.9%で、全産業の12.0%より高かった。
全産業を事業所の規模別に見ると、前職の賃金を考慮する割合は、1,000人以上の事業所で48.1%、5〜29人の事業所で24.4%と、規模が大きいほど高い。年齢、学歴、経験・能力・知識も同じ傾向だった。医療・福祉に限った規模別の数字は公表されていないので、大きな病院と小さな事業所で同じ差があるかは、この資料からは分からない。
前の職場の給料は、あまり見られていないんですか。
考慮したと答えた事業所は、医療・福祉では2割ほどだね。
多かったのは、経験と資格のほうだったよ。
前の給料より、資格と経験をどう伝えるかが大事なんですね。
採用予定の事業所は68.4%に増えた
今後3年間に転職者を採用する予定がある事業所は、医療・福祉で68.4%だった。前回の55.2%から13.2ポイント上がり、全産業の63.6%も上回る。「情報通信業」の72.6%、「建設業」の70.9%、「運輸業,郵便業」の69.4%に次ぐ4番目である。採用予定がある事業所のうち、「転職者を優先して採用したい」は36.9%、「新規学卒者を優先して採用したい」は10.2%で、残る53.0%は「どちらとも言えない」だった。
転職者を採用するときに重視した事項は、医療・福祉では「人員構成の歪みの是正」が54.2%で最も多く、「組織の活性化」が36.8%、「既存事業の拡大・強化」が29.7%だった。全産業では「人員構成の歪みの是正」が48.3%、「既存事業の拡大・強化」が39.5%である。事業を広げるためというより、職員の年齢や経験の偏りを埋めるために転職者を採る事業所が多い。
職種別に見た採用の理由もある。ただし、こちらは産業を分けない全体の数字である。看護師、准看護師、栄養士、保育士などが入る「専門的・技術的な仕事」で転職者を採った事業所では、「経験を活かし即戦力になるから」が64.1%、「専門知識・能力があるから」が51.2%だった。ホームヘルパーなどが入る「サービスの仕事」では、「離職者の補充のため」が60.8%で最も多かった。
入職後の研修は84.4%が実施
転職者がいる事業所のうち、転職者に教育訓練を実施した事業所は、医療・福祉で84.4%だった。全産業の82.6%を上回り、前回の77.4%から7.0ポイント上がった。実施しなかった事業所は14.4%である。
実施した事業所のうち、日常の業務に就きながら計画的に行う「計画的なOJT」は78.1%、仕事を一時的に離れて行う「OFF-JT」は69.7%だった。OFF-JTのうち「入職時のガイダンス」は61.5%で、全産業の53.9%より高い。5年前と比べた医療・福祉の変化をまとめると、次のとおりである。
| 医療,福祉 | 2020年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 転職者がいる事業所 | 38.3% | 48.8% |
| 転職者のうち、期間を定めて雇われた人 | 15.7% | 25.9% |
| 今後3年間に転職者を採る予定の事業所 | 55.2% | 68.4% |
| 転職者に教育訓練をした事業所 | 77.4% | 84.4% |
出典:厚生労働省「令和2年転職者実態調査」「令和7年転職者実態調査」。期間を定めて雇われた人は、1年以上の雇用期間を定めて雇われた人
転職者の81.3%は自己都合で辞めた
転職した本人に聞いた個人調査は、産業別の数字が公表されていないので、全産業の数字になる。転職者が直前の勤め先を辞めた主な理由は「自己都合」が81.3%で最も多く、前回の76.6%から上がった。
自己都合で辞めた理由(3つまでの複数回答)は、「賃金が低かったから」が25.5%、「会社の将来に不安を感じたから」が25.2%、「満足のいく仕事内容でなかったから」が24.7%、「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」が23.4%、「人間関係がうまくいかなかったから」が22.2%だった。上位5つが3.3ポイントの幅に並び、飛び抜けた理由はない。
今の勤め先を選んだ理由(3つまでの複数回答)は、「仕事の内容・職種に満足がいくから」が40.2%、「自分の技能・能力が活かせるから」が38.4%、「労働条件(賃金以外)がよいから」が23.1%の順で、「賃金が高いから」は18.8%だった。今回から加わった選択肢の「育児や介護・看護と両立できるから」は7.0%だった。
辞めた理由は、給料だけではないんですね。
次の職場も、仕事の中身で選んだ人がいちばん多かったね。
迷ったらここ
資格と経験の数え方を聞く
医療・福祉では、転職者の賃金に資格や経験を考慮する事業所が多くあります。前の職場の給料よりも、資格や経験を何としてどう数えるかで、提示される額が変わりえます。面接や条件の確認で、次の点を聞いておくと比べやすくなります。
- 持っている資格ごとの手当の有無と金額
- 前の職場での経験年数を、何年分としてどう数えるか
- 試用期間と本採用のあとで、賃金が変わるか
- 正職員か、期間を定めた雇用か
編集部の見方:資格と経験を言葉で伝える
ここからは編集部の見方である。この調査が示しているのは、医療・福祉の事業所が転職者の賃金を決めるときに、前職の賃金よりも資格と経験を見ているということだ。全産業では前職の賃金を考慮する事業所が27.0%あるのに対し、医療・福祉は19.8%にとどまる。
求職者にとっては、前の職場の給料が低かったことが、そのまま次の給料を決めるとは限らない、という読み方ができる。反対に、資格や経験の数え方は事業所ごとに違う。同じ「経験5年」でも、同じ職種での経験だけを数えるのか、ほかの施設形態での経験も数えるのかで、提示される額は変わりうる。何を持っていて、どこで何年働いたかを、具体的に伝えられる準備をしておきたい。
採用予定のある事業所は5年前の55.2%から68.4%に増え、期間を定めて雇われる転職者の割合も15.7%から25.9%に増えた。採用の間口は広がっているが、雇用の形はそろっていない。提示された額を比べる前に、正職員なのか、期間を定めた雇用なのかを確かめたい。
医療・福祉の賃金の動きは医療・福祉の賃金3.3%増の記事で整理している。
出典
一次資料
- 厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」(2026年9月25日公表、2026年9月28日参照)。報道発表用資料、概況、図表データはこのページにある
- 同「令和7(2025)年「転職者実態調査」の結果を公表します」(PDF、2026年9月25日)
- 同「令和2年転職者実態調査の概況」(2026年9月28日参照)。前回の数字はここから取った
編集部メモ
- 数値はすべて厚生労働省が公表した図表データから取りました。割合の内訳を足すと100%に戻ること、産業の順位が16の産業を並べた結果と一致することを、編集部で計算し直して確かめています。
- 「医療,福祉」は産業の区分で、病院や診療所、介護の事業所、保育所などを含みます。看護師・介護職・保育士・栄養士を職種ごとに分けた数字は公表されていません。
- 転職者の賃金を決めるときに考慮した要素は、前回2020年の調査では「処遇(賃金、役職等)」を決めるときの要素として聞いており、問いと選択肢が今回と違います。そのため、この項目は前回と比べていません。
- 「最も重視した要素」、事業所の規模別の数字、個人調査の結果は、産業別の数字が公表されていないため、全産業の値を使いました。
- 職種別の採用理由は、産業を分けない全体の数字です。「専門的・技術的な仕事」と「サービスの仕事」に入る職種の例は、調査の職種分類表の例示から取りました。
- 報道各社の記事は参照していません。数値も記述も、すべて厚生労働省の公表資料から取っています。

