介護の処遇改善、栄養士への配分は特養85.6% 全体では20.4%

介護の処遇改善、栄養士への配分は特養85.6% 全体では20.4%
目次

30秒でわかるまとめ

  • 日本栄養士会が管理栄養士の処遇改善を要望しました9月16日の国の会議で、介護分野で働く管理栄養士・栄養士の処遇改善など、2027年度の介護報酬改定に向けた4つの要望を出しました。
  • 処遇改善加算を栄養士にも配った施設は20.4%です厚生労働省の調査で、看護職員の51.9%や生活相談員の50.8%と比べて低い数字です。日本栄養士会はこれを根拠にしています。
  • 特養では85.6%が栄養士にも配っています施設の種類で大きく違い、訪問介護は4.4%、通所介護は13.7%でした。全体の数字は、数の多い事業所に引っ張られています。
  • 管理栄養士・栄養士の給与は1年で1万2,000円増えました月給・常勤の平均給与額は32万3,810円です。介護職員の1万3,960円増より少なく、看護職員の9,360円増を上回ります。

日本栄養士会は9月16日、厚生労働省の社会保障審議会・介護給付費分科会で、2027年度(令和9年度)の介護報酬改定に向けた要望を示した。4つの要望の1つが「介護分野で働く管理栄養士・栄養士の処遇改善」である。PT-OT-ST.NETは9月18日、この日の意見交換会で日本栄養士会などの関係団体から聞き取りが行われたと伝えた。要望の根拠になった厚労省の調査を原本までさかのぼると、「20.4%」という数字の中身は施設の種類で大きく違うことが分かる。介護の職場で働く管理栄養士・栄養士、これから介護の職場を探す人に向けて整理する。

日本栄養士会が4項目を要望

9月16日の分科会は、改定に向けて関係団体の意見を聞く意見交換会の3回目で、訪問看護やリハビリの団体、自治体などが資料を出した。日本栄養士会の要望は次の4つである。

  1. 介護保険施設の嚥下調整食を、療養食加算の対象として評価する
  2. 「機能強化型認定栄養ケア・ステーション」を、外部の管理栄養士の連携先として評価する
  3. 介護分野で働く管理栄養士・栄養士の処遇改善
  4. 介護保険施設の基準費用額(食費)を適時適切に見直す

出典:日本栄養士会「令和9年度介護報酬改定で要望する事項」(第267回介護給付費分科会 資料5)

処遇改善の要望では、「専門性・役割に応じた適切な処遇改善」を求めた。理由として、専門性を続けて発揮できる環境を整えることで人材の確保・定着を図ることを挙げている。

ちはる

介護の処遇改善って、栄養士も対象なんですか。

熊先生

加算を介護職員以外にどこまで配るかは、職場が決めるんだ。

ちはる

じゃあ、職場によって配られたり、配られなかったりするんですね。

配った施設は全体で20.4%

日本栄養士会が根拠にしたのは、厚労省の「令和6年度介護従事者処遇状況等調査」である。2024年10月に行われ、8,180の施設・事業所が回答した。介護職員等処遇改善加算を届け出ている施設・事業所に、加算をどの職種にも配ったかを聞いた結果は次のとおり(複数回答)。

職種配った割合
看護職員51.9%
生活相談員・支援相談員50.8%
事務職員37.9%
PT、OT、ST又は機能訓練指導員34.3%
介護支援専門員32.8%
管理栄養士・栄養士20.4%
調理員19.6%

出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」

管理栄養士・栄養士は、看護職員の半分に届かない。日本栄養士会はこの数字から、処遇改善の効果は確認されている一方で、管理栄養士・栄養士への配分は他の専門職と比べて限定的だと主張している。

特養は85.6%、訪問介護は4.4%

ただし、この20.4%は訪問介護から特養までをまとめた数字である。同じ調査の統計表には、施設・事業所の種類別の内訳がある。

施設・事業所の種類栄養士看護職員
介護老人福祉施設(特養)85.6%88.7%
介護老人保健施設66.0%75.9%
介護医療院37.5%59.4%
通所リハビリテーション31.0%53.4%
特定施設入居者生活介護25.1%75.7%
小規模多機能型居宅介護17.5%67.8%
通所介護13.7%66.4%
認知症対応型共同生活介護12.7%37.1%
訪問介護4.4%19.1%

出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」第33表。加算を配った施設・事業所の割合。「栄養士」は管理栄養士・栄養士

特養では85.6%が管理栄養士・栄養士にも配っており、看護職員の88.7%とほとんど変わらない。老健も66.0%ある。低いのは訪問介護や通所介護、グループホームなどである。

全体の数字が低く出るのは、集計のしかたにも理由がある。この調査は、全国の施設・事業所の数に合わせて重みをつけて集計している。調査の抽出のもとになった事業所数では、訪問介護と通所介護だけで対象9種類の6割を占める。日本栄養士会自身も、通所系・居宅系のサービスでは全ての事業所に管理栄養士を置くのは難しいと書いている。管理栄養士・栄養士がもともと少ない種類の事業所が、全体の割合を押し下げていると考えられる。

ちはる

特養だと、ほとんどの施設が栄養士にも配っているんですね。

熊先生

そう。全体の20.4%だけ見ると、実態を読み違えるね。

熊先生

介護医療院は37.5%で、看護職員の59.4%と差が大きいよ。

ちはる

同じ施設でも、職種で配り方が違うんですね。

2年前の18.5%とは比べにくい

日本栄養士会の資料は、管理栄養士・栄養士への配分を「令和4年度 18.5%→令和6年度 20.4%」と並べ、1.9ポイント上がったとしている。

ただ、厚労省の概要では、令和4年度の18.5%は「介護職員等ベースアップ等支援加算」の配分状況として参考に載っている数字である。令和6年度の20.4%は、調査が「新加算」と呼ぶ「介護職員等処遇改善加算」の配分状況で、加算の種類が違う。調査の時期も、令和4年度は12月、令和6年度は10月だった。上がったか下がったかを同じ物差しで比べた数字ではない点に注意したい。

令和4年度の参考値では、看護職員も45.1%だった。どの職種も令和6年度のほうが高いが、加算の種類が違うので、伸びた幅を職種どうしで比べる材料にはしにくい。

給与は1年で1万2,000円増

同じ調査は、加算を届け出ている事業所で、2023年9月と2024年9月の両方に在籍していた人の給与を比べている。月給・常勤の平均給与額(基本給+手当+4〜9月に支給された一時金の6分の1)は次のとおり。

職種2024年9月1年の増加
介護職員338,200円13,960円
看護職員384,620円9,360円
管理栄養士・栄養士323,810円12,000円
調理員272,240円12,100円

出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」。「1年の増加」は2023年9月との差

一時金を除いた平均基本給等で見ると、管理栄養士・栄養士は25万240円で、1年で7,650円増えた。介護職員の1万1,130円増より小さく、看護職員の7,140円増より大きい。

嚥下調整食と食費も要望

ほかの3つの要望も、管理栄養士・栄養士の仕事に直接かかわる。

嚥下調整食について、いまは誤嚥が認められる人への多職種の取り組みを「経口維持加算」で評価している。日本栄養士会は、嚥下調整食は単なる調理上の工夫ではなく、食形態の選択から提供、観察、見直しまでを伴う栄養ケアだとして、療養食加算の対象にするよう求めた。

外部の管理栄養士との連携では、いまは都道府県栄養士会の栄養ケア・ステーション(124拠点)が連携先に位置づけられている。これに加えて、日本栄養士会が認定する「機能強化型認定栄養ケア・ステーション」(86施設、2026年9月1日現在)も連携先にするよう求めた。責任者には、管理栄養士で医療・介護の栄養管理などの実務経験5年以上といった要件がある。栄養アセスメント加算を算定していない理由に「管理栄養士の配置や外部機関との連携が難しい」を挙げた事業所は、通所介護で50.2%、通所リハで37.8%だったとする調査も示した。

食費については、日本栄養士会の資料によれば、介護保険施設の基準費用額は2026年8月から1日100円引き上げられた。そのうえで、食材料費や人件費の実態に合わせた見直しを続けるよう求めた。日本栄養士会の調査では、約8割の施設で食材料費が前年度より増えたとしている。

ちはる

外部の管理栄養士として働く道も、広がるかもしれませんね。

熊先生

要望の段階だよ。改定で採用されるかは、これからの議論だね。

迷ったらここ

加算の配分先を面接で確かめる

介護の処遇改善加算を管理栄養士・栄養士に配るかは、施設の種類と職場の判断で大きく違います。介護の職場に応募するときは、給与の内訳まで聞いておくと安心です。

  • 処遇改善加算を管理栄養士・栄養士にも配っているか
  • 配っている場合、手当か基本給か、賞与に上乗せか
  • 管理栄養士の人数と、給食が委託か直営か
  • 嚥下調整食や栄養ケアの業務がどこまで任されるか
栄養士の転職サービスを比較する

編集部の見方:配分は面接で聞ける

「管理栄養士・栄養士に処遇改善加算を配った施設は20.4%」という数字は、介護の職場で働く管理栄養士が報われていないという印象を与える。しかし内訳を見ると、特養では85.6%、老健でも66.0%が配っている。管理栄養士・栄養士がもともと少ない訪問介護や通所介護が、全体の数字を押し下げている面が大きい。

一方で、職種どうしの差が残るのも事実である。介護医療院では看護職員59.4%に対して37.5%、特定施設では75.7%に対して25.1%と開きがある。給与の増え方も、介護職員より小さい。日本栄養士会の要望は、この差を制度の側で埋めてほしいというものである。

働く側にとって大事なのは、加算を配るかどうかを職場が決めているという点である。同じ種類の施設でも、配る職場と配らない職場がある。介護の職場に応募するなら、処遇改善加算が管理栄養士・栄養士にも回っているか、手当か基本給かを面接で聞いてよい。答えられない職場より、配り方を説明できる職場のほうが、給与の見通しを立てやすい。

介護施設の管理栄養士の確保については管理栄養士が足りないという記事で、処遇改善加算の区分と賃上げの差は処遇改善加算の記事で整理している。2027年度改定の議論で要望がどう扱われるかも追っていく。

出典

一次資料

報道

編集部メモ

  • 数値はすべて厚労省の調査の原本と日本栄養士会の資料から直接取りました。1年の増加額は、2つの時点の額の差が原本の差と一致することを確かめています。
  • ⚠ 全体の20.4%は、全国の事業所数に合わせて重みをつけた数字です。種類別の割合を単純に平均しても20.4%にはなりません。調査の抽出のもとになった事業所数で種類別の割合を重みづけし直すと、およそ20.3%になり、看護職員もおよそ52.0%と原本の51.9%に近い値になることを確かめました。
  • ⚠ 日本栄養士会の資料の「令和4年度18.5%」は、厚労省の概要ではベースアップ等支援加算の配分状況として参考に載っている数字です。令和6年度の処遇改善加算とは種類が違うため、本文では「比べにくい」と書きました。
  • 日本栄養士会の資料にある平均給与額の表は、一部の職種で数字の並びが厚労省の原本とずれています。本文の給与はすべて厚労省の概要から取りました。
  • 訪問介護や通所介護で配分の割合が低い理由は、調査には書かれていません。本文の「もともと少ない種類の事業所が押し下げている」は、集計方法と日本栄養士会の記述からの編集部の見立てです。
  • 嚥下調整食の負担について日本栄養士会は別の調査研究の数字も示していますが、図の読み取りが一意にできないため本文には書いていません。
  • PT-OT-ST.NETの報道は、この日の意見交換会の内容が報じられた時期を示すために参照しました。要望の中身と数値はすべて原本から取っています。
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この記事を書いた人

医療・福祉・保育の人材紹介の現場で求職者の相談を受けてきた編集者が担当しています。キャリアアドバイザー歴8年、転職相談・紹介の対応実績1,500人以上(自社実績/2026年8月時点)。介護・看護師・保育士・栄養士の4分野を担当。記事の数値には必ず出典と公表時点を添えています。

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