30秒でわかるまとめ
- 栄養教諭の事故防止は、献立の段階から始まります1回の給食で複数の料理に同じ原因食物を使わないなど、作業を単純にする工夫が指針に並んでいます。
- 対応の原則は、提供するかしないかの二者択一です少量なら可、加工食品なら可といった多段階の対応はせず、完全除去か、すべて提供するかで対応します。
- 調理指示書は、普通食と対応食を1枚にまとめます前日か当日の朝に、調理にかかわる全員で指示書・作業工程表・作業動線図を見ながら打合せを行います。
- 対応を決めるのは、校長が委員長を務める委員会です食物アレルギー対応委員会が個別の取組プランを決め、ヒヤリハットも含めてすべての事例を報告します。
※保育所の場合は別のガイドラインがあり、保育園の食物アレルギー対応で扱っています。学校給食の衛生管理は学校給食の衛生管理基準で扱っています。

まず位置づけ:平成27年3月に文部科学省が示した指針です
原本は、文部科学省「学校給食における食物アレルギー対応指針」(平成27年3月)です。「はじめに」によると、平成24年12月に食物アレルギーを有する児童が学校給食終了後にアナフィラキシーショックの疑いにより亡くなる事故が起き、文部科学省は平成25年5月に調査研究協力者会議を設置、平成26年3月に最終報告を取りまとめました。指針はその考え方を踏まえて作られています。
出典:同指針「はじめに」
指針は自らを「文部科学省として示した指針」と書いており、法律や省令の条文ではありません。設置者(教育委員会等)が方針を定め、各学校と共同調理場が対応マニュアル等を整備するときの参考資料です。以下の「p.」は冊子に印刷されたページ番号です。
文部科学省の掲載ページは、2026年9月18日の確認時点でもこの指針を掲載しており、改訂版の掲載は確認できませんでした。

大原則は6つあります
| # | 大原則 |
|---|---|
| 1 | 食物アレルギーを有する児童生徒にも、給食を提供する。そのためにも、安全性を最優先とする。 |
| 2 | 食物アレルギー対応委員会等により組織的に行う。 |
| 3 | 「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」に基づき、医師の診断による「学校生活管理指導表」の提出を必須とする。 |
| 4 | 安全性確保のため、原因食物の完全除去対応(提供するかしないか)を原則とする。 |
| 5 | 学校及び調理場の施設設備、人員等を鑑み無理な(過度に複雑な)対応は行わない。 |
| 6 | 教育委員会等は食物アレルギー対応について一定の方針を示すとともに、各学校の取組を支援する。 |
出典:同指針「学校給食における食物アレルギー対応の大原則」(p.4)。番号は編集部が計数
「教育委員会等」には、国立大学法人や学校法人など学校の設置者が含まれると注記されています。

対応は4つのレベルに分かれます
| レベル | 指針の定義(要約) |
|---|---|
| レベル1(詳細な献立表対応) | 原材料を詳細に記した献立表を事前に配布し、保護者や担任などの指示又は本人の判断で、原因食品を除いて食べる |
| レベル2(弁当対応) | 中心的献立の代替提供が困難な場合にその献立だけ持参する一部弁当対応と、すべて持参する完全弁当対応 |
| レベル3(除去食対応) | 原因食物を除いて提供する。本来の除去食は、調理過程で特定の原材料を除いた給食 |
| レベル4(代替食対応) | 本来の代替食は、除去した食材や献立の栄養量を考慮し、それを代替して1食分の完全な給食を提供すること |
出典:同指針 Ⅲ総論 1-6「給食対応の基礎用語」(p.36)。要約は編集部
「詳細な献立表の作成と配布は学校給食対応の基本であり、レベル2以上の対応でも、あわせて提供すること。」
出典:同指針 Ⅲ総論 1-6(p.36)(原文どおり)
どのレベルでも、詳細な献立表が土台です。
二者択一:多段階の除去はしません
総論は最優先は“安全性”とし、従来の多段階対応をやめる理由を書いています。牛乳アレルギーの例では、完全除去、少量可、加工食品可、牛乳を利用した料理可、飲用牛乳のみ停止の5つの段階があり、個々に対応すると業務が複雑・煩雑になり「事故の温床にもなる」としています。
- 二者択一=完全除去か、すべて提供するか。多段階対応はしない。
- 代替食と除去食=理想的な提供方法は代替食。安全性が担保できないときは除去食を選ぶ。
- 除去食で中心の献立が抜ける場合は、一部弁当対応になる。
出典:同指針 Ⅲ総論「学校給食における食物アレルギー対応の原則的な考え方」(p.37)
弁当対応を考える対象として、調味料・だし・添加物の除去が必要、多品目の食物除去が必要、食器や調理器具の共用ができない、といった場合が挙がっています(p.21)。一方で、単にエピペン所持であるとか、アナフィラキシーやアナフィラキシーショックの既往があるだけで弁当対応にする必要はないとも注記しています(p.21)。個々の食品の除去について、補足事項は保護者と相談の上、医師に改めて確認をとるよう求めています。この記事は個々の食品の可否を判断していません。
ここが本題:事故を防ぐ仕組みは、献立の段階から始まります
| 区分 | 指針が挙げている工夫 |
|---|---|
| 特に重篤度の高い原因食物(そば、落花生(ピーナッツ)) | 学校給食での提供を極力減らす |
| 特に発症数の多い原因食物(卵・乳・小麦・えび、かに) | 1回の給食で複数の料理に同じ原因食物を使用しない/一週間の中にその原因食物が使用されない日を作る/添加物として原因食物が使われていない加工食品を選ぶ |
| 料理名・献立表 | 原因食物が使われていることが明確な料理名にする/献立表は複数の関係者で確認し、関係者全員で同一のものを共有する |
| 献立の変更 | やむを得ない場合のみとし、対応方法を委員会で決めておく |
出典:同指針 Ⅱ解説 3「献立の作成と検討」(p.18〜22)。要約は編集部
栄養教諭・学校栄養職員等は、献立を作る際に、複雑で煩雑な調理作業とならないように作業工程表や作業動線図で確認するとされています(p.20)。事故を防ぐ最初の手は、調理場ではなく献立の上で打たれています。
調理と配膳:1枚の指示書、区別化、ダブルチェック
前日あるいは当日の朝、栄養教諭・学校栄養職員と調理にかかわる全員で、調理指示書、作業工程表、作業動線図を見ながら綿密な打合せを行います。
「なお、調理指示書、作業工程表、作業動線図は普通食用のものと対応食用のものとを別に作るのではなく、1枚で普通食・対応食に係る作業が確認できるようにします。」
出典:同指針 Ⅱ解説 4-2 1「実施献立・調理手順等の確認」(p.26)(原文どおり)
| 段階 | 指針に書かれている仕組み |
|---|---|
| 区別化 | 対応食担当の調理員を区別し、作業の単純化、引継ぎによるエラーを防ぐ/他と異なる色の専用エプロンを着用するなど(p.24) |
| 確認の決め方 | 確認作業の方法(確認者、ダブルチェック、声出し指差し確認など)やタイミングをあらかじめ決め、チェック表を作る(p.25) |
| 検収・調理中 | 複数の検収担当者が確認し記録する/途中で取り分ける場合は、対応食担当者が混入がないことを確認してから取り分ける(p.27) |
| 調理後・配膳 | 複数の調理員等でダブルチェック/単独調理場方式は配膳を複数の人でダブルチェック(p.28) |
出典:同指針 Ⅱ解説 4-1・4-2。要約は編集部
チェック表には、調理員が検収時・調理時・配食時に、担任が受取時・給食中・その後の観察を記入します(p.25)。指針は、確認が「日々の流れ作業にならないように配慮」するよう求めています(p.27)。
教室での確認と、ヒヤリハットの報告
教室では、対応食と一般献立との違いを監督者と本人が確認する方法を決め、確認作業が形骸化しないように注意するとされています(p.30)。学校や調理場で起きたすべての事故及びヒヤリハット事例は食物アレルギー対応委員会に報告し、すべての事例を市区町村教育委員会等にも報告します(p.22)。
緊急時については、全職員がエピペンを正しく扱えるよう実践的な研修を定期的に実施するとされています(p.44)。具体的な手順は、指針も日本学校保健会の資料を参照するよう案内しており(p.31)、この記事では扱っていません。
対応を決めるのは、食物アレルギー対応委員会です
「学校給食の食物アレルギー対応は、個人の努力や良心に任されるものではなく、組織で対応するものです。」
出典:同指針 Ⅲ総論 1-2「組織で対応し、学校全体で取り組む」(p.33)(原文どおり)
| 委員(例) | 主たる役割例 |
|---|---|
| 委員長:校長 | 対応の総括責任者 |
| 養護教諭 | 実態把握、主治医や学校医と連携、事故防止 |
| 栄養教諭・学校栄養職員 | 給食調理・運営の安全管理、事故防止 |
| 関係学級担任・学年主任 | 安全な給食運営、保護者連携、事故防止 |
出典:同指針 Ⅱ解説 1-1(p.12)【委員構成例と主たる役割例】から抜粋。ほかに副校長・教頭、教務主任・主幹教諭、保健主事、給食主任が挙がっています
調理場で対応を実施するかは、単独調理場では校長が、共同調理場の受配校では校長からの依頼を受けた共同調理場長が決定します(p.16)。
栄養教諭・学校栄養職員の役割
総論の「教職員の役割例」は、栄養教諭及び学校栄養職員の役割を4つ挙げています(p.42)。
- 食物アレルギーを有する児童生徒の実態把握や個別の取組プラン等を立案する。
- 個別面談をマニュアルに定められた者と一緒に行う。
- 安全な給食提供環境を構築する。
- マニュアルや個別の取組プラン等に基づき、具体的な調理・配膳作業等を管理する。
解説では、養護教諭とともに面談調書と個別の取組プラン案を作ること(p.15)、可能な限り対象の学級を訪問して実態把握や個別指導に努めること(p.29)も書かれています。単独調理場方式では、保護者と毎月、詳細な献立表等で対応内容の具体的な確認、調整を行い、書面で了解を得るとされています(p.23)。
この記事が扱っていないこと
- エピペンの使い方や、症状が出たときの手順。本記事は取得していません。
- 「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」と学校生活管理指導表の中身。日本学校保健会の資料で、取得していません。
- 個々の食品を除去するかどうかの判断。補足事項も医師への確認を求めています。
- 食物アレルギーの児童生徒数や事故の件数。統計は取得していません。
学校で働くときに確認できること
- 食物アレルギー対応委員会があり、動いているか。
- 設置者の方針と、学校・調理場のマニュアルがあるか。
- 調理指示書が普通食と対応食で1枚になっているか。
- 確認の方法とタイミングが決まっているか。誰が、いつ、ダブルチェックをするかです。
よくある質問
Q. この指針は法律ですか。
A. 文部科学省が平成27年3月に示した指針で、法律や省令の条文ではありません。設置者の方針や学校のマニュアルを作るときの参考資料とされています。
Q. 除去の量を子どもごとに調整してもよいですか。
A. 指針は多段階対応はせず、完全除去か、すべて提供するかの二者択一を原則としています。
Q. 栄養教諭・学校栄養職員の役割は何ですか。
A. 役割例として、実態把握や個別の取組プラン等の立案、個別面談への参加、安全な給食提供環境の構築、具体的な調理・配膳作業等の管理が挙がっています。
Q. エピペンを持っている子は、弁当対応になりますか。
A. 指針は、単にエピペン所持であるとか、アナフィラキシー等の既往があるだけで弁当対応にする必要はないと注記しています。
迷ったらここ
アレルギー対応の体制を確かめる
文部科学省の指針は、学校給食の食物アレルギー対応を個人の努力や良心に任されるものではなく、組織で対応するものとしています。
- 食物アレルギー対応委員会があり、動いているか
- 調理指示書が普通食と対応食で1枚になっているか
- ダブルチェックの方法とタイミングが決まっているか
まとめ
「学校給食における食物アレルギー対応指針」は、文部科学省が平成27年3月に示したものです。大原則の中心は、安全性を最優先にし、原因食物を提供するかしないかの二者択一で対応することです。
事故防止は、献立で原因食物の使い方を絞ることから始まり、普通食と対応食を1枚にした調理指示書、区別化、ダブルチェック、教室での確認、ヒヤリハットの報告へと続きます。決めるのは校長が委員長の委員会で、栄養教諭・学校栄養職員の役割例は給食調理・運営の安全管理、事故防止です。

