30秒でわかるまとめ
- 訪問介護のヘルパーの56%がハラスメント被害です利用者や家族からで、過去1年間の話です。ヘルパー団体が会員に聞いた調査で、回答は288件でした。
- 訪問介護事業所の約6割が赤字と答えました令和7年度の収支です。今後サービスを続けられるか不安だという回答も75%ありました。
- 8割の事業所が人材不足だと答えています近隣の事業所が休止・廃止した影響を受けた事業所も43%あり、うち4割以上が依頼を断っていました。
- 2つの団体が基本報酬の引上げを求めました9月10日の国の分科会で、令和9年度の介護報酬改定に向けて11の団体が意見を述べています。
厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会が2026年9月10日に開かれ、令和9年度の介護報酬改定に向けて11の団体が意見を述べた。訪問介護を担う2つの団体が出した資料には、会員に聞いた調査の結果が載っている。そこにあるのは、報酬の話だけではなく、ヘルパーがいまどんな環境で働いているかの数字だった。ここでは原典の資料を読み、あわせて当日を報じた各社の記事も参照して、訪問介護で働くこと・移ることを考える人から見て何が見えるのかを整理する。
11の団体が意見を述べた
この日のテーマは介護系居宅サービス等で、訪問介護・通所介護・居宅介護支援・小規模多機能型居宅介護などが対象である。出席したのは全国ホームヘルパー協議会と日本ホームヘルパー協会、全国介護事業者連盟、日本認知症本人ワーキンググループなど11の団体だった。
この場は今回から名前が変わっている。資料には「『団体ヒアリング』を発展的に見直し」て意見交換会にした、と書かれている。社会福祉法等の一部を改正する法律の施行で令和9年度から制度改正が行われることを踏まえた変更である。団体が意見を述べたあとに、分科会の委員との意見交換を行う形になった。
意見交換会は4つのテーマに分かれていて、この日はその1回目だった。
| 回 | テーマ |
|---|---|
| 第265回 | 介護系居宅サービス等(訪問介護、通所介護、居宅介護支援など) |
| 第266回 | 居住系・施設系サービス等(特別養護老人ホーム、グループホームなど) |
| 以降 | 医療系サービス(訪問看護、老健など)/中山間・人口減少地域 |
出典:厚生労働省「令和9年度介護報酬改定に関する意見交換会・実施要領」(第265回 資料1)
この分科会は介護報酬を決める場である。ここで出た意見がそのまま通るわけではないが、次の改定の材料になる。
訪問介護は求人をよく見かけるので、人手が足りているのかと思っていました。
求人が多いのは、足りていないからだよ。逆なんだ。
その足りていない現場が、いまどうなっているかを知りたいです。
56%がハラスメントを受けていた
2つの団体が出した資料に、会員アンケートの結果がある。回答した288件のうち、56%が過去1年間に利用者・家族からハラスメントを受けたことがあると答えていた。
訪問介護は、職員が1人で利用者の自宅へ入る仕事である。そこで半数を超える人が経験しているという数字が、国の分科会に出された資料に載っている。
⚠ この調査は会員2,763名に配って288件の回答である。回答率は10.4%で、答えた人に偏りがある可能性は残る。
事業所の約6割が赤字と答えた
同じ調査の経営に関する部分はこうなっている。
| 会員アンケート(回答288件) | 割合 |
|---|---|
| 令和7年度の収支が赤字 | 約60% |
| サービス提供の継続が不安 | 75% |
| 人材が不足している | 80% |
| ハラスメントを受けた | 56% |
| 近隣事業所の休止・廃止の影響 | 43% |
出典:全国ホームヘルパー協議会・日本ホームヘルパー協会「令和9年度介護報酬改定に向けた要望」(第265回 資料2)。調査は令和8年7月17日から7月31日まで
近隣の事業所が休止・廃止した影響を受けたと答えた43%のうち、4割以上が「希望する依頼を断らざるを得なかった」と回答している。1つの事業所がなくなると、残った事業所に依頼が集まり、そこも受けきれなくなるという連鎖である。
令和6年度に基本報酬が下がった
この状況の起点として、資料は令和6年度の改定を挙げている。「令和6年度の介護報酬改定において訪問介護系サービスの基本報酬が引き下げられた」ことを受けて、事業所の閉鎖や倒産が全国各地で相次いでいる、という書き方である。
その後に令和8年度の改定もあったが、資料は物価高騰と賃金上昇の影響で経営環境は深刻なままだとしている。資料が出した要望は3つで、基本報酬の引上げ、地域のサービス基盤の充実、総合事業の拡充である。
人材確保についても触れている。資料は「ホームヘルパーの有効求人倍率は他職種と比べても著しく高く、人材確保は極めて深刻な状況にある」と書いた。ただし倍率の数値そのものは、この資料には載っていない。
事業所が赤字だと、働く人の給料にも響きますよね。
そこは資料も同じことを言っているね。賃金の改善が難しいと書いてある。
ただ、事業所ごとの差はこの資料からは分からないんだ。
だとすると、業界の平均ではなく1つの事業所を見るしかないんですね。
移動時間が提供時間を上回る地域も
資料は、地域によって働き方がまったく違うことにも触れている。中山間地域・人口減少地域・豪雪地域・離島について、会員から挙がった課題がそのまま並べられている。
- 利用者宅が点在していて、移動時間や移動距離が長く、訪問件数が限られる
- 移動にかかる人件費やガソリン代の負担が大きい
- 移動時間がサービス提供時間を上回ることもあり、採算性が低い
- 採算が合わないため他の事業所が入ってこず、新規の申し込みを断らざるを得ない場合がある
- 豪雪地域では、スリップの危険から2人で移動することもある
- ホームヘルパーの高齢化により、遠距離や冬季の訪問への対応が難しい
出典:同 資料2の参考資料
資料はさらに、同じ訪問介護でも「集合住宅等を中心にサービス提供をしている事業所とは移動時間・経費を含め事業構造が異なる」と書いている。同じ職種名でも、担当する地域によって1日の中身が変わるということである。
求人票で見える「訪問1件あたり」の条件が同じでも、移動にかかる時間が違えば1日に回れる件数が変わる。
当日の様子は各社が報じている
ここからは、当日の会議を取材した記事から引く。以下の2つは編集部が現場で確認したものではなく、介護ニュースJointとMEDIFAX webの報道による。
介護ニュースJointは9月10日、日本ホームヘルパー協会の松下みゆき会長が「使命感だけでこの仕事を続けることはできない」「訪問介護がなくなってから、その大切さに気づくのでは遅い」と述べたと報じている。
MEDIFAX webも同じ日、訪問介護の基本報酬について「大幅引き上げ必須」との意見が出たと伝えている。
⚠ 赤字の割合は、原本と報道で食い違っている。資料は「約60%」、介護ニュースJointは「57%」である。本記事は原本の数字を使った。
編集部の見方:求人の多さは楽さではない
ここからは編集部の見方である。
訪問介護の求人はよく目につく。だがこの資料を読むかぎり、求人が多いのは人が足りないからで、働きやすいからではない。資料が挙げたのは、赤字・人材不足・ハラスメント・依頼を断る状況で、どれも働く側にそのまま返ってくるものである。
そのうえで、この数字は業界の平均であって、ある事業所の姿ではない。回答は288件で、全国の訪問介護事業所は数万ある。赤字の事業所があるということは、赤字でない事業所もあるということでもある。
だから見るべきは業界の数字ではなく、目の前の1つの事業所になる。とくにハラスメントを受けたときに事業所がどう動くかは、入る前に確かめられる。訪問介護は1人で利用者の自宅に入る仕事なので、その場で助けを呼べる相手がいるかどうかが直接効く。
なお、この意見交換会は始まったばかりで、何も決まっていない。令和9年度の改定でどうなるかは、これからの議論による。
ハラスメントのことは、面接で聞いてもいいんでしょうか。
国の分科会に出ている話だからね。答えを持っている事業所も多いはずだよ。
迷ったらここ
ハラスメントを受けたとき、誰がどう動くかを聞く
ヘルパーの56%が過去1年間にハラスメントを受けたと答えています。訪問介護は1人で利用者宅に入る仕事です。起きるかどうかより、起きたあとどうなるかを先に確かめてください。
- その場で連絡できる相手は決まっているか(時間帯を問わず届くか)
- 担当を外してもらえるか。外した場合に収入は減るか
- 移動時間と移動にかかる費用は、どこまで支払われるか
出典
一次資料
- 厚生労働省「第265回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料」2026年9月10日開催(2026年9月11日参照)
- 同 資料2「全国ホームヘルパー協議会、日本ホームヘルパー協会 令和9年度介護報酬改定に向けた要望」。会員アンケートの実施概要と、赤字・不安・人材不足・ハラスメントの割合はここにある
- 同 資料1「令和9年度介護報酬改定に関する意見交換会・実施要領」。団体ヒアリングを見直した経緯と、テーマの分け方、参加団体はここにある
報道
- 介護ニュースJoint「「使命感だけでは続けられない」 ヘルパーの団体が切実な訴え 訪問介護の報酬引き上げを強く要請」2026年9月10日(2026年9月11日参照)
- MEDIFAX web「訪問介護の基本報酬、「大幅引き上げ必須」 27年度改定で意見交換会」2026年9月10日(2026年9月11日参照)
編集部メモ
- この記事から、報道も材料として使っています。これまでのニュースは一次資料だけで書いてきましたが、2026年9月10日に方針を変えました。報道由来の部分には、本文に媒体名を書いています。数値と制度の記述は、これまでどおり原典から取っています。
- 割合はすべて回答288件が分母です。編集部で回答率を計算し直したところ、対象2,763名(1,763名+1,000名)に対して10.4%でした。⚠ 1割あまりしか答えていないので、答えた人に偏りがある可能性は残ります。本文にも分母と回答数を書きました。
- ⚠ 赤字の割合が、原本と報道で食い違っています。資料には「全体の約60%が赤字」とあり、介護ニュースJointは「57%」と報じています。どちらが正しいかを公表資料から判断できなかったため、本記事は原本の「約60%」を使いました。本文にもこの食い違いを書いています。
- ⚠ 有効求人倍率の数値は書いていません。資料は「他職種と比べても著しく高く」としか書いておらず、倍率そのものが載っていないためです。
- 松下みゆき会長の発言は、編集部が現場で聞いたものではありません。介護ニュースJointの報道によるもので、本文にもそう書いています。
- この調査は2つの団体の会員に聞いたものです。全国の訪問介護事業所を対象にした調査ではありません。事業所の数や倒産件数など、業界全体の数字はこの資料には載っていません。
- 「4割以上が依頼を断った」の分母は、近隣事業所の休止・廃止の影響を受けた43%のほうです。回答した288件全体ではありません。
- ハラスメントの中身(何をされたか、誰からか)の内訳は、この資料では分かりません。本記事では扱っていません。
- 事業所ごとの収支や賃金の違いは、この資料では分かりません。業界の平均しか示されていないため、本記事でも個別の事業所については書いていません。
- この日はほかに9つの団体も意見を述べています。福祉用具、小規模多機能型居宅介護、地域包括支援センターなどが対象で、本記事では訪問介護に絞りました。
- 意見交換会はこのあとも続きます。第266回は居住系・施設系サービス、次いで医療系サービス、中山間・人口減少地域がテーマです。そこで何が出たかを、改めて取り上げる予定です。

